とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

急性心不全

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フローチャート

 

心不全の原疾患

✅虚血性心疾患
急性冠症候群、虚血性心筋症、スタニング、ハイバネーション、微小循環不全

✅慢性心不全の急性増悪

✅心筋症
ストレス性心筋症(たこつぼ型心筋症、カテコラミン心筋症、敗血症性心筋症など)、肥大型心筋症、拡張型心筋症、拘束型心筋症不整脈原性右室心筋症

✅弁膜症

心タンポナーデ

血栓塞栓症

不整脈による心不全

急性心筋炎、心外膜炎

収縮性心外膜炎好酸球性心筋症、ウイルス性心筋炎

✅心毒性物質
薬剤性心筋症放射線性心膜炎・心筋障害、アルコール性など

✅感染性
ウイルス性心筋炎細菌性心内膜炎、リケッチア感染

✅免疫疾患
関節リウマチ、SLE、多発性筋炎、MCTD

✅妊娠
周産期心筋症、産褥性心筋症

✅浸潤性疾患
サルコイドーシス、アミロイドーシス、悪性腫瘍、ヘモクロマトーシス

内分泌疾患
甲状腺機能亢進症、クッシング病、脚気心、褐色細胞腫など

高心拍出心不全

重度貧血甲状腺機能亢進症、動静脈シャント、脚気

先天性心疾患

 

増悪因子

FAILUREで鑑別

Forgot Meds…薬の飲み忘れ(高血圧と頻脈)

ArrhythmiaとAnemia…不整脈と貧血

IschemiaとInfection…虚血と感染症←肺炎+心不全が非常に多い

Lifestyle…ライフスタイル(塩分過剰、ストレス、睡眠時無呼吸症候群

Upregulator…呼吸不全甲状腺機能亢進症、妊娠(←呼吸不全と心不全は合併しやすい

Rheumatic、Regurgitation…リウマチ性のものを含めた弁膜症、IE

Embolism…肺塞栓

 

冠疾患のリスクファクター

高血圧、糖尿病、脂質異常症、家族歴、喫煙歴、肥満

 

Framingham criteria

大症状2つか、大症状1つおよび小症状2つ以上を心不全と診断する。

大症状 小症状 大症状あるいは小症状
発作性夜間呼吸困難または起坐呼吸 下腿浮腫 5日間の治療に反応して4.5㎏以上の体重減少があった場合、それが心不全治療による効果ならば大症状1つ、それ以外の治療ならば小症状1つとみなす
頸静脈怒張 夜間咳嗽
ラ音聴取 労作性呼吸困難
心拡大 肝腫大
急性肺水腫 胸水貯留
拡張早期性ギャロップ(Ⅲ音) 肺活量減少(最大量の1/3以下)
静脈圧上昇>16㎝H2O 頻脈>120/分
循環時間延長>25秒以上
肝頸静脈逆流

 

 

検査

✅血算、生化、血糖、凝固、CK-MB、トロポニンT、BNPTSH、FT4UAHbA1c、TG、T-Chol、HDL-C、LDL-C

✅胸部レントゲン(立位か座位)

✅心電図、心エコー

心不全以外の鑑別が必要な時はCTまで。

 

BNPとNT-proBNP

BNP

400以上で急性の心不全の可能性が高い。100以下で心不全はほぼ除外できる。

✅NT-proBNP

50歳未満であれば450以上、50~75歳であれば900以上、75歳以上であれば1800以上で心不全の可能性が高いと判断する。300以下で心不全はほぼ除外できる。

またNT-proBNPは腎機能障害で上昇する!→透析患者では6000がカットオフになる!!

 

画像所見

✅心拡大

✅間質性肺水腫

肺静脈拡張→小葉間隔壁肥厚・気管支血管束の肥厚→胸水貯留

✅肺胞性肺水腫

中枢側優位のすりガラス影や浸潤影(バタフライシャドウ)

 

心エコー

心エコーの評価(リンク先を参照してください)

 

心不全の診断フローチャート

 

急性・慢性心不全診療ガイドライン(2017年改定版)を参考に作成

 

クリニカルシナリオと治療

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ざっくりとまとめると・・・

CS1

硝酸薬±BIPAP、必要に応じて利尿剤→血圧が下がらなければニカルジピン

硝酸薬:ミオコールスプレー2プッシュ ⇒ ミオコール持注(使い方はこちら

CS2

硝酸薬とBIPAP、利尿剤も必要なケースが多い

CS3

補液と強心薬で改善しなければスワンガンツ

管理が難しいので循環器内科に必ずコンサルト!

CS4

急性冠症候群の治療に従う。

管理が難しいので循環器内科に必ずコンサルト!

Af+拡張不全型心不全

ランジオロール持注やジギタリス静注+利尿剤

貧血が心不全を悪化させている場合

Hb10を目標に輸血

 

BIPAP:呼吸困難が強い場合やCO2貯留がある場合に積極的に考慮。

※呼吸苦が減る⇒交感神経↓⇒血圧↓でafterload mismatchが改善しやすくなる。

 

急性心不全のフォローアップ

★体液評価4点セット

尿測・体重測定・飲水量測定・心エコー!

 

✅尿測・飲水量測定を毎日、体重測定毎日(もしくは週3回)、心エコー。

飲水制限とりあえず800~1000ml未満!

✅レントゲンは急性期には毎日撮影する!

心不全が改善するまでは-1000~-2000ml/日のアウトバランスを目標とする。

✅減塩食(6g未満)

 

慢性期の治療(急性心不全が落ち着いたら)

心不全の種類によって慢性期の治療が変わる

✅HFrEF(EF40%未満)・・・ACE-I or ARBβblockerを導入。必要に応じてCAG

✅HFpEF(EF50%以上)・・・利尿剤

✅HFmrEF(40%<EF<50%)・・・病態に応じて判断

 

★心エコーで「局所壁運動異常」や「広範な壁運動異常」がある場合はCAGなどで冠動脈の評価を検討する。

 

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ACE-I

✅血圧>100mmHg、症候性低血圧にならない範囲で以下を導入する

・レニベース2.5-5mg/日分1 or コバシル2-4mg/日分1

βブロッカー

メインテート0.625㎎/日 or アーチスト2.5㎎/日より開始

(軽症例なら倍量より開始)

メインテートなら5mg/日、アーチストなら20mg/日まで増量可。

(5~7日毎にメインテート0.625㎎、アーチスト2.5㎎ずつ増量。)

✅βを増量して2-3日後に心不全徴候が出やすいので注意する。

✅HR≧50bpm、SBP≧100mmHgを確認しながら増量する。

※ビソノテープ4mg≒メインテート2.5mg

※ビソプロロールはβ1選択性 ⇒ 血圧が下がりにくい、喘息にも使用可能。

アルドステロン拮抗薬

✅EF 35%未満のNYHAⅡ以上の心不全に適応あり。

スピロノラクトン 12.5~25mg/日より開始。維持量25~50mg/日 1日1回投与

・エプレレノン 25mg/日より開始。維持量50mg/日 1日1回投与

 

 

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