とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

腎機能障害

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最初のアプローチ

まずは緊急透析が必要な病態かを確認する

緊急の透析導入基準

✅K≧6.0(内科的治療単独では厳しそうな場合)、高Mg、高Ca血症

代謝性アシドーシス(PH7.2未満)、Base Excessが-15以下に低下

✅腎不全に伴う肺水腫、うっ血性心不全

✅尿毒症症状(BUN60~100以上)

✅乏尿が3日以上持続

✅BUNが60mg/dl以上で1日毎に10mg/dl程度上昇する

✅Creが5mg/dl以上で1日毎に1mg/dl程度上昇する

 

次に急性腎障害(AKI)かどうかを考える

急性の腎性腎不全を疑う目安

✅AKIN基準、KDIGO基準を満たす

★尿量の急速な低下を認める(6~12時間で尿量が時間体重あたり0.5ml/kg/hr未満)

★Creが48時間以内に0.3㎎/dl以上の増加、または基礎値からCreが1.5倍以上上昇

✅輸液してみて腎前性要素が否定された、腹部エコーで腎後性が否定された

✅蛋白尿と血尿の両方が出ている

✅急性発症の蛋白尿がある

✅尿沈渣で赤血球円柱・顆粒円柱・上皮円柱が出ている(糸球体病変を示唆する)

 

★AKIと認識したら本気で鑑別を進める必要あり!(腎性腎不全の可能性が高い)

腎臓内科コンサルト

 

鑑別疾患

まず最初に考える鑑別は?

尿路感染症薬剤性(腎機能低下で投与量の変更が必要な薬剤もチェック)、上部消化管出血慢性腎機能障害(糖尿病性等)脱水や低Alb血症による腎前性腎後性の6つ!

★腎前性と腎後性を必ず鑑別すること!!

 

<鑑別疾患>

 

最初の検査

AKI疑いネフローゼ症候群の場合 ⇒ 腎臓内科コンサルト

被疑薬の中止・変更

腎排泄の薬剤は腎機能に応じて用量を調節。

✅体液量評価:尿測(尿量低下に注意!)・飲水量測定・体重測定、心エコー(IVC評価)

腹部エコー(腎前性や腎後性腎不全などの評価、腎動脈狭窄症疑いの場合は腎血管エコー)

✅血ガス(アシドーシスの評価、特に電解質異常がある場合は評価すべし)

尿定性・沈査(尿潜血、尿蛋白、円柱の評価)FENaおよびFEUN(尿中Crと電解質、血中/尿中BUN)

✅血液検査(Ca、P、Alb、HbA1c(腎機能が非常に悪い場合や貧血、ヘモグロビン異常がある場合はグリコアルブミン)、UA(脱水と痛風腎の評価))、血漿浸透圧(脱水等の評価)、正確な腎機能評価のためにシスタチンC(シスタチンクリアランス)、AKIの早期診断のためにNGALL-FABP

✅尿細管障害の評価:尿中NAG、尿中β2ミクログロブリン、血中β2ミクログロブリン(NAGとβ2MGは尿中クレアチニン補正が必要)
*尿中NAGは5-15U/gCr未満、尿中β2MGは200μg/gCr未満が正常
*尿中NAG・β2MG上昇 ⇒ 尿細管障害
*尿と血中のβ2MG上昇・尿中NAG正常 ⇒ β2MG産生量増加(慢性炎症や悪性腫瘍)

✅尿定性で尿蛋白多い場合 ⇒ 随時尿検査にて尿蛋白/尿Cr比(1日推定尿蛋白)⇒ 蛋白尿多いなら1日蓄尿

ネフローゼがある場合は、下記の追加検査および血性・尿中IgGとトランスフェリン測定(selectiviyty indexの測定、ステロイド抵抗性かどうかが分かる)

 

*FENa=(尿Na×血清Cr)/(血清Na×尿Cr)×100

FENa>1%で腎性。

*FEUN=(尿UN×血清Cr)/(血清UN×尿Cr)×100

FEUN>35%で腎性。

 

追加する検査

分からなければ腎臓内科コンサルト

✅血ガス(アシドーシス、RTAの評価)、尿中NAG、尿中β2ミクログロブリン、血中β2ミクログロブリンMPO-ANCA、PR3-ANCA、抗GBM抗体、IgG/IgM/IgA/IgG4、T-Chol(ネフローゼで上昇)、血液像目視(TMA疑い、Fragmentationの確認)、膠原病関連(ANA、ds-DNA抗体、SS-A抗体、SS-B抗体、Scl-7抗体、抗セントロメア抗体、抗RNAポリメラーゼⅢ抗体)、補体C3/C4/CH50(Ⅲ型アレルギーの評価)、血液・尿免疫電気泳動(骨髄腫腎)、RPR、HBs抗原、HBc抗体、HCV抗体、HIV抗体、クリオグロブリン、ASLO、ACE、CEACA19-9などを測定する。

✅腎血管エコー(腎動脈狭窄症の鑑別)

✅薬剤性腎障害が疑われる場合は血中・尿中好酸球、IgE、DLSTなども検討。

腎生検を考慮(腎臓内科コンサルト)

 

急性期治療の基本的な考え方

✅ARF/AKI⇒Do not harm!

とりあえず適切な輸液を行って腎前性の除外腎後性AKIの除外、腎毒性のある薬剤や腎機能を低下させる薬剤を中止。腎機能による薬剤投与量の調節・減量。

👉これでもとに戻らないやつは腎性腎不全疑い!

 

腎生検の適応の考え方

★腎生検の適応

腎生検は腎臓にダメージを与えてしまうため、急性期の患者は本当に必要な患者のみに行う!

 

①腎生検をできる人かどうかを考える(息止めできる?検査後に安静になれる?)

②抗血栓薬を飲んでるか確認(飲んでたらできないので休薬が必要)

③腎臓の菲薄化、腎機能が高度に低下してしまっている症例、大量の腹水が貯留している症例、多発嚢胞腎、水腎症、尿路感染症の合併、片腎などは腎生検の適応にならない可能性がある(腹部エコーやCTで確認)

 

慢性腎機能障害の専門医への紹介基準

★腎臓専門医への紹介基準
  • 尿蛋白0.5g/gCr以上、もしくは検尿試験で2+陽性
  • 蛋白尿と血尿が両方陽性(定性で1+以上)
  • 40歳未満 GFR60ml/分/1.73m²未満
  • 40歳以上70歳未満 GFR50ml/分/1.73m²未満
  • 70歳以上 GFR40ml/分/1.73m²未満

 

 

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