オーバービュー
原因
極論:入院中に急激に進行した認知症はせん妄を疑え!
検査と処置
✅精神科コンサルト(治療や対症療法の相談、うつ病の評価など)
✅血算、生化学、電解質(Na、K、Cl、Ca)、肝機能、腎機能、血糖、凝固、血ガス、尿検査、アンモニア、ビタミンB1、TSH、FT4、Fever workup、髄膜炎が疑わしい場合はルンバールまで。
✅頭部CTやMRI(器質的疾患の除外。「低活動せん妄」と「意識障害」の鑑別)
✅原因となる薬剤の変更・中止
✅抑制の同意書取得
✅医療介入要因の是正(こちらを参照)
✅認知症の評価(HDS-RやMMSE)←認知症の周辺症状(BPSD)の可能性。
⇒ Treatable dementiaの評価(こちらを参照)
医療介入要因の是正
✅昼夜のリズムをつける:朝はカーテンを開ける
✅オリエンテーションをつける:時計やカレンダーを見える場所に置く
✅家族との面会を促す。家族などの写真を置く。
✅せん妄の原因となる薬剤を可能な限り中止・変更
(BZ系、非BZ系→中止、H2 blocker→PPIへ、オピオイド、ステロイド、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、抗てんかん薬、抗精神病薬、抗パーキンソン病薬など)
✅身体拘束はなるべく避ける(安全管理上必要ならやむを得ない)
✅不要なルートや尿カテは早めに抜去
✅眼鏡や補聴器を付ける
✅リハビリを行う
せん妄の診断
一般病床での評価(3D-CAM)
(引用:丸石製薬株式会社 CAM-ICUせん妄評価フローシート)
せん妄の治療
★基本はBZ系/非BZ系以外の睡眠導入剤+メジャートランキライザー
☆低活動せん妄の場合は抗精神薬は使用しない!(抗うつ薬のデジレルやテトラミドを用いることがある)
一般的な処方例
◆就寝前
- ベルソムラ(15mg/20mg) 1錠 or デエビゴ(2.5mg/5mg) 1錠内服
+クエチアピン25㎎ 0.5~1錠
- 睡眠覚醒リズムを整えるため、ロゼレム8mgの併用も有効。
◆不穏時
- クエチアピン25㎎ 0.5~1錠 頓用
- 興奮が強い場合はリスペリドン0.5mg~2mg眠前内服(錠剤を拒薬する場合は内用液もある)
糖尿病でクエチアピンが使用できない場合
腸管が使えない人
- クエチアピンをシクレスト(アセナピン)舌下錠 5~10㎎で代用する
(糖尿病患者にも使用できます!)
せん妄ハイリスク・せん妄発症患者の追加の睡眠導入剤
*低活動せん妄にも有用
認知症の周辺症状による不穏・興奮
★基本的に認知症の治療は「周辺症状」に対する治療がメインとなる!
(中核症状は進行の抑制のみであり治癒は困難)
※認知症の中核症状に対する薬(抗認知症薬)
アセチルコリンエステラーゼ阻害薬は嘔気・下痢、徐脈、QT延長に注意
メマンチンは眠気、めまい、便秘、頭痛に注意。腎機能障害の場合は用量制限あり。
不穏時指示テンプレート
①リスペリドン内用液(OD錠)5ml 少量の水に溶かして内服(1時間あけて2回まで内服可)
②クエチアピン(25㎎)を0.5~1錠内服(1時間あけて2回まで内服可)
③アタラックスP1A+NS 50ml投与
④セレネース注(5mg)1A+NS100ml div(30分で投与。4時間あけて再使用可)
※重症心不全には禁忌。
⑤サイレース0.5A+NS100ml div(30分で投与。4時間あけて再使用可)
午前3時以降は朝の覚醒が不良になるためなるべく使用を控えてください。
過活動せん妄で内服や静注が困難な場合の不穏時指示
①セレネース2.5~5.0mg 筋注
②ロナセンテープ20~40mg 眠前に貼付
(ロナセンテープ20mg≒リスペリドン1mg)
どうしても制止が効かないせん妄患者の対処
管理が困難な場合は必要に応じて以下を考慮する
① 精神科コンサルト
② 体幹抑制
③ プレセデックス ⇒ ミダゾラムやプロポフォール(呼吸抑制に注意する!!)
リスペリドン1㎎=セレネース2㎎=ルーラン8㎎=クエチアピン66㎎
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