とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

敗血症の治療

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診断基準

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quick SOFA(qSOFA)

①意識の変容(GCS≦14点)

②呼吸数≧22回/分

収縮期血圧≦100mmHg

2項目以上を満たす場合は敗血症を疑い、集中治療管理を考慮する

 

検査

✅ショックバイタルの時の初期対応はショックの項を参照

EGDTに沿って対応する

✅採血、凝固(DICの評価)、血ガス(乳酸値の評価)、BNP、プロカルシトニン(可能ならプレセプシン)、血中エンドトキシン、免疫グロブリン(IgG補充必要?)

✅血液培養、尿培養、その他の感染のfocusの培養

✅胸部X線写真、全身CT(必要に応じて造影CT)

✅心エコー(大量補液するので心機能を評価)。

✅輸液や昇圧剤の反応が不十分な場合はTSH、FT3、FT4、ACTH、コルチゾールの提出を検討する。

 

EGDT(Early Goal-Directed Therapy)

 ★6時間以内に目標達成を目指す

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治療

輸液
  • CV留置
  • 低血圧、乳酸>4mmol/Lであれば調整晶質液(乳酸リンゲル等)を30ml/kg急速投与
  • MAP≧65mmHgを目標に輸液を行う。

 

循環作動薬

バソプレシンの使い方

バソプレシン40単位/2ml+生食38mlで希釈してtotal 40ml(1単位/ml)とする。

2.0ml/hr(0.03単位/min)より開始し、1.0~2.5ml/hr(0.01~0.04単位/min)の間で0.5ml/hrずつ増減し調節する。

減量する前に先にノルアドレナリンの中止を検討する。

 

ステロイド

★相対的副腎不全が疑われた場合は診断的治療で投与を検討する!

  • ハイドロコートン200mgを持続 点滴or 100mgを1日2回 投与。
  • ハイドロコートン50mgを1日4回 6時間毎に投与。
    1週間程度投与し、その後3日毎に漸減。

 

抗菌薬治療
  • ソースコントロール(膿瘍ドレナージ、デバイスの抜去)
  • 広域抗菌薬を可及的早期に投与 ⇒ カルバペネム系で良い。
  • 表皮からの感染が疑われる場合はMRSA治療薬(VCM)投与を行う。(特にデバイスからの感染)
  • 免疫不全宿主の場合は真菌などの検査・治療を検討。
  • ARDS合併の場合はアジスロマイシン併用を検討。

 

DIC治療

リコモジュリン

380U/kg+生食100ml,1日1回。腎機能障害がある場合は130U/kgに変更。投与期間は1週間が目安。(DICスコアが低下傾向かつ現治療OKの場合に投与終了)

ノイアート、ノンスロン

ATⅢ<70%の時に適応。1500単位1本/日を3日間投与が基本。体重が重い場合は30単位/kg投与可能。ATⅢ>70%で中止。

FFP

以下の場合にFFPの補充を検討する。

① PT-INR2.0以上あるいはPT%が30%以下

②APTTが上限値の2倍以上

③低フィブリノゲン血症(100mg/dL未満)

  • FFP 8~12ml/kgを24~48時間毎に投与

 

輸血療法
  • Hb<7g/dlで赤血球輸血を行う。
  • 血小板5万以下で出血傾向もしくは2万未満の時に輸血。
    (臨床では5万以下になったら輸血することが多い)

 

免疫グロブリン
  • IgG<400ではヴェノグロブリン200~600mg/kgを3~4週間間隔で点滴静注する。
  • 重症感染症として投与する場合はヴェノグロブリン5000㎎を1日1回 3日間投与

敗血症におけるIVIgはルーチンでは推奨されていない。

劇症型溶血性レンサ球菌感染症に対しては弱く推奨。

 

代謝性アシドーシス
  • 代謝性でPH<7.15の時に
    メイロン8.4%投与量(ml)=base excess×体重×0.20(50㎏の人ならBE×10ml)
    メイロン7.0%投与量(ml)=base excess×体重×0.25

 

ARDSの呼吸管理
  • 1回換気量6ml/kg、プラトー圧≦30㎝H2O、HiPEEP(ARDS Networkの換算表を参考に)、Low driving pressureで管理(PSを低くし高CO₂を許容)
  • 無気肺に対し、腹臥位療法、体位ドレナージ
  • V/Qミスマッチ改善のためにNO吸入も考慮(保険適応外
  • In overにならないように利尿薬を使用する。

 

代替療法
  • 早期に導入することは推奨されていない。
  • 急性腎不全による代謝性アシドーシスや高K血症が改善しない場合に導入する。
  • 血液浄化療法を導入する場合はPMXの導入も検討する。

 

血糖

血糖値140~180mg/dlを目標にコントロールを行う。

 

栄養療法

血圧が落ち着いてから早期に経腸栄養開始(なるべく24~48時間以内)

72時間以内に目標カロリーの約80%を投与することを目標とする

25kcal/kgを最終目標カロリーとする(NPC/N比 100程度)

(参照:栄養療法

 

その他

DVT予防、ストレス潰瘍予防にPPI

 

 

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