オーバービュー
鑑別
胃十二指腸潰瘍(ピロリ菌、NSAIDS、ステロイドなど)、抗血栓薬内服、食道静脈瘤破裂、胃静脈瘤破裂、悪性腫瘍、Mallory-Weiss症候群、胃穿孔、食道破裂、逆流性食道炎、食道潰瘍、Diulafoy潰瘍、急性胃粘膜病変(AGML)、血管異形成、膵管出血(仮性嚢胞や動脈瘤、腫瘍)、その他の腫瘍(GIST、リンパ腫、カルチノイド)など
最初の検査と処置
✅緊急で消化器内科コンサルト ⇒ 緊急内視鏡を検討する(Mallory-Weiss症候群以外)
*吐血の緊急内視鏡の判断は難しいことも多く、施設の環境によっても対応が異なる。そのため、吐血した時点で消化器内科にコンサルトすべきと筆者は考える。
*緊急内視鏡のタイミングについてはこちらを参考にする。
✅緊急度の判断のため、バイタルサイン、採血、胸腹造影CTをオーダーする!
✅出血セット:血算、凝固、鉄検査(Fe、フェリチン、TIBC、UIBC)、輸血検査(血液型、不規則抗体スクリーニング、クロスマッチ)
✅血ガス
✅輸血オーダー(輸血基準はこちら)
✅胸部X線写真(誤嚥の評価と喀血の除外)
✅胸腹部造影CT(可能な限り造影!Extravasationの確認、出血部位の評価、胃内の高吸収の確認、free airの確認などを行う)
✅心電図(2次性の心筋虚血の確認)
✅緊急内視鏡
✅補液:血圧の維持
✅INR>1.5、血小板<5万は補正
✅PPI投与
✅止血剤:アドナ25㎎+トランサミン250㎎+生食100mlを1日2回点滴
明確なコンセンサスはない。
以下の場合は超緊急(6時間以内)の内視鏡が必要。
✅血行動態不安定
✅新鮮血の吐血(NG tubeから新鮮血)
✅Hb≦8g/dl
✅造影CTでExtravasationを認める
✅造影CTで食道静脈瘤の破裂が疑われる症例
✅抗血栓薬が中止できない症例
✅Glasgow Blatchford score(GBS)が12点以上
GBSスコアが1点以下であれば緊急性は低い!
Glasgow Blatchford score (GBS)
BUN |
点 |
Hb |
点 |
収縮期血圧 |
点 |
その他 |
点 |
≧18.2、<22.4 |
2 |
男性≧12、<13 女性≧10、<12 |
1 |
100~109 |
1 |
心拍数>100回/分 |
1 |
≧22.4、<28 |
3 |
男性≧10、<12 |
3 |
90~99 |
2 |
黒色便 |
1 |
≧28、<70 |
4 |
<10 |
6 |
<90 |
3 |
失神 |
2 |
≧70 |
6 |
|
|
|
|
肝疾患、心不全 |
それぞれ2 |
1点以下で緊急性はなし。12点以上は緊急性が高い。
原因の検査
胃十二指腸潰瘍の場合
✅ピロリ菌、薬剤性(NSAIDS、ステロイド、BP製剤、アルコール)などが主な原因となる。
✅難治性潰瘍の原因として悪性腫瘍、ガストリノーマ(MENⅠ)、サイトメガロウイルス、ヘルペスウイルス、結核、梅毒、炎症性腸疾患や膠原病(強皮症、悪性関節リウマチ、血管炎、ベーチェットなど)による2次性の潰瘍
✅原因薬剤の中止、ピロリ抗体、CEA、CA19-9をチェック。
✅難治性の場合は各疾患の検査を追加
食道静脈瘤の場合
✅肝硬変の評価(参照:肝機能障害)、アンモニアの評価。
✅アンモニア上昇傾向の場合は肝性脳症の治療。
出血・貧血のルーチン
Major bleedingの定義
①致死的な出血・・・外傷、上部消化管出血、黒色便、喀血など
②クリティカルな臓器の症候性出血(頭蓋内出血、硬膜内出血、眼内出血、後腹膜出血、関節内出血、心嚢内出血、筋肉内出血、コンパートメント症候群)
③ヘモグロビンが2g/dL以上低下または2単位以上の輸血が必要
リバースのやり方
ワーファリン
①ケイツー10㎎/2mlを2A静注(3時間で効果発現)
②急いで補正したい場合はPCC製剤(30分で効果発現)
③必要に応じてFFP2~4単位(効果発現に5~6時間かかる)
ダビガトラン
①イダルシズマブ 5g(2.5g/Vを2V使用)を5~10分かけて点滴
②イダルシズマブがなければPCC製剤(保険適応外)やFFP
その他のDOAC
①アンデキサネット(オンデキサ)を使用する。
※適応はエドキサバン、リバーロキサバン、アピキサバンのみ
②PCC製剤(保険適応外)やFFP
*PCC製剤:ケイセントラやPPSB
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