とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

食事摂取不良、体重減少

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鑑別

ABCDEF TRIPSで鑑別!!

Abdominal
Anemia
慢性胃炎、消化性潰瘍、機能性ディスペプシア、便秘症、イレウス、炎症性腸疾患、GERD、放射線性食道炎・宿酔、食道カンジダ、CMV食道潰瘍・腸炎など
貧血
Brain 脳出血(慢性硬膜下血種)、脳梗塞、脳腫瘍、癌性髄膜症、パーキンソン病
Cardio うっ血性心不全心筋梗塞
Drug  
Electrolyte
Endocrine
低Na、高Ca、Zn欠乏、Fe欠乏(Plummer Vinson症候群)、ビタミンB1・B2・B12欠乏
甲状腺クリーゼ、甲状腺機能低下症、副腎不全、DKA、HHS、副甲状腺機能亢進症
Frail

低栄養や運動器障害(身体的フレイル・サルコペニア)、うつや認知症(精神・心理的フレイル)

特に入院きっかけで顕在化することが多い

Tumor 悪性腫瘍による炎症、カヘキシアなど
Respirarion COPD、IP、肺高血圧症
Infection
Inflammation
感染症(重症感染症副鼻腔炎による味覚障害
膠原病、炎症性腸疾患
Psychiatry 神経性食思不振症、うつ病統合失調症認知症
Swallowing disturbance

加齢に伴う嚥下機能低下、義歯が合っていない、顎の脱臼、反回神経麻痺、球麻痺(脳卒中、腫瘍、ALS、ギランバレー、MS、重症筋無力症など)、脳梗塞脳出血による嚥下障害(仮性球麻痺)、脳腫瘤や椎体亜脱臼などによるBasiler compression、頸部や食道の腫瘤・通過障害(食道の腫瘤や腫瘍による食道外部からの圧迫、アカラシア、潰瘍後狭窄、骨棘や前縦靭帯骨化症の突出・DISH)、気切チューブのバルーンによる食道圧迫、プランマービンソン症候群による食道炎、咽頭カンジダ、食道カンジダ口内炎、CMV食道潰瘍・腸炎放射線性食道炎、パーキンソン症状による嚥下障害、シェーグレン症候群による唾液減少、強皮症による嚥下障害、nutcracker食道など

 

原因となる薬剤

中枢神経の抑制 睡眠導入剤、抗てんかん薬、抗うつ薬抗精神病薬抗不安薬、抗ヒスタミン薬、筋弛緩薬など
平滑筋や骨格筋の機能障害 カルシウム拮抗薬、アルコール、テオフィリン、抗コリン薬、抗うつ薬など
嘔気・嘔吐・食欲不振 化学療法、アマンタジン、抗生剤、ビスホスホネート製剤、ジゴキシン、テオフィリン、SSRI、メトホルミンやαグルコシダーゼ阻害剤
食道への炎症・障害 ビスホスホネート製剤、鉄剤、カリウム製剤、ドキシサイクリン
味覚・嗅覚障害 アロプリノール、ACE阻害剤、抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、カルシウム拮抗薬、レボドパ、スピロノラクトン、プロプラノロール
ドライマウス 抗コリン薬、抗ヒスタミン薬、利尿剤、クロニジン

 

検査

超高齢者の食欲不振

① 加齢に伴う嚥下機能障害

② 入院きっかけで食べなくなった

③ 低栄養で元気がない

④ フレイル

などの自然なADL低下で食事が食べられなくなる場合はしばしばある。

(動かない ⇒ 栄養が必要なくなる ⇒ 食べない ⇒ 筋力低下 ⇒ 動かない・・・)

✅上記の負の連鎖を断ち切るために、「栄養」と「リハビリ」が大事!

✅ただし回復しないことも多々ある ⇒ 回復しない場合は老衰の状態であることを家族に説明する老衰のICはこちら

 

食欲不振の原因精査・処置

食欲不振の対症療法・リハビリ・栄養指導

✅経管栄養/CVなどを検討(終末期の場合はどこまでやる?

✅炎症性疾患がありそうな場合は不明熱の鑑別(発熱・炎症反応上昇を参照)

✅排便・排ガスがあるか確認 ⇒ 便秘やイレウス

✅症状や基礎疾患に応じた画像評価(全身CTでも可)(→器質的疾患の精査)

  • 消化器疑い ⇒ 腹部X線写真/腹部CT(必要なら造影)/腹部エコー、必要に応じて上部消化管内視鏡消化器内科コンサルトイレウスの場合は胃管挿入
  • 中枢性疑い ⇒ 頭部CT/頭部MRI(必要に応じて造影)、必要ならルンバール、神経内科/脳神経外科コンサルト

✅採血、電解質(Na、K、Ca)、Zn、Fe、ビタミン、肝腎機能、TSH、FT4、ACTH、コルチゾール。必要なら真菌やウイルスの評価。

消化管内視鏡検査も積極的に検討する。

便潜血

薬剤の確認と原因がありそうなら中止・減量を検討、抗てんかん薬の薬物血中濃度を測定。

口内炎により食べられない場合は口内炎治療と歯科受診。

心不全が疑わしい場合

BNP、心電図、胸部X線写真、心エコー。

✅悪性腫瘍が疑わしい場合

全身造影CT⇒分からない場合はPET-CTまで考慮。

✅嚥下機能低下が疑われる場合

嚥下リハによる評価、頭部~胸部CT(嚥下障害の器質的原因の精査、反回神経麻痺の原因精査)、耳鼻科ファイバー(反回神経麻痺の評価)、嚥下造影やVE/VF、頭蓋内病変が疑わしい場合には頭部CT⇒頭部MRIまで考慮。

食事形態の変更・トロミ付けなど

✅メンタルが原因の可能性がある場合

精神科/心療内科コンサルト。

 

対症療法

一般的な対症療法

付加食または本人の好きなものを食べてもらう(栄養士に相談も検討)

嚥下が問題の場合は食事形態の変更とろみつけ(必要に応じてVE/VFの評価)

疾患に伴う一時的な食事摂取不良であれば経管栄養を考慮(経管栄養が嫌ならCVや末梢点滴で代用)

 

薬物療法

六君子湯補中益気湯、人参養栄湯、十全大補湯など。3包分3 毎食前。

ガスモチン 3錠分3 毎食後(胃腸の動きを促進)

半夏厚朴湯 3包分3 毎食前(のどのつかえ感、異物感に)

ドグマチール 3錠分3 毎食後(割と良く効くが錐体外路症状に注意) 

 

悪性腫瘍による食欲不振の場合は以下も使用する

ステロイド

ベタメタゾンを0.5~1.0mg/日で開始。有効な投与量まで4.0mg/日まで増量する。

効果が持続しないため、予後1~2ヶ月の患者に使用する。

ステロイド投与前のチェックはこちら

エドルミズ

エドルミズ100mgを1日1回 空腹時内服

<適応>

適応疾患:非小細胞肺癌、胃癌、膵癌、大腸癌におけるがん悪液質

6か月以内に5%以上の体重減少と食欲不振があり、かつ以下の①~③のうち2つ以上を認める患者に使用すること。

疲労または倦怠感

②全身の筋力低下

CRP値0.5mg/dL以上、ヘモグロビン値12g/dL未満またはアルブミン値3.2g/dL未満のいずれか1つ以上

<副作用>

心電図異常、糖尿病増悪、肝機能障害など

 

 

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