とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

健診異常・生活習慣病の診療

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フォローアップ

まず始めに

健康診断を年に1回必ず受けるように指示

⇒後日、健康診断の結果を持参してもらう。

✅労働者:一般定期健診(会社の検診)

✅被扶養者など健診が受けれない人(40歳~74歳):特定検診(メタボ検診)

✅75歳以上後期高齢者健康診査

 

何等かの理由で健康診断を受けていない人(定期的に医療機関を受診している等)

⇒採血(血算、生化、血糖)、肝腎機能、TG、T-Chol、LDL-C、HDL-C、UAHbA1c、尿検査、血圧測定、心電図、胸部X線写真を年に1回行う。

血糖と中性脂肪の評価には食前採血が必要

 

フォロー間隔

糖尿病以外は下記のスケジュールでフォロー(糖尿病はこちらを参照)

✅異常なし→年に1回の検診だけで良い!

✅異常はあるが治療なし→3ヶ月毎にフォロー

✅異常があり治療必要→治療開始後は安定するまでは1ヶ月毎(又は2か月毎)にフォロー。

安定したら3ヶ月毎にフォロー、採血は3ヶ月~半年毎にフォロー

 

高血圧

リスク評価

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管理目標
  診察室血圧 家庭血圧
75歳未満の成人
脳血管障害
(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞なし)
冠動脈疾患患者
CKD患者(尿蛋白陽性)
糖尿病患者
血栓薬服薬中
<130/80 <125/75
75歳以上の高齢者
脳血管障害患者
(両側頸動脈狭窄や脳主幹動脈閉塞あり、または未評価)
CKD患者(尿蛋白陰性)
<140/90 <135/85

 

治療開始基準

✅血圧手帳を渡して、朝と寝る前の血圧を毎日測定してもらう。(原則2回測定し平均値をとる)

✅下記のフローを参考に治療を行う。

※一般的に食事運動療法による降圧効果は5~10mmHg程度であるため、収縮期血圧≧150mmHgの場合も初期から薬物療法を開始するようにしている。

 

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食事運動療法
減塩 6g/日未満
野菜・果物 野菜・果物の積極的摂取
脂質 コレステロール飽和脂肪酸の摂取を控える。魚の積極的摂取
減量 BMI<25を目標
運動 有酸素運動を毎日30分以上
節酒 エタノールで男性20-30ml/日以下
女性10-20ml/日以下
禁煙  

 

栄養士のいる病院であれば栄養指導をしてもらう(食品交換表の使用)

✅食事の指導を行う。

・カロリーを控えめにする:炭水化物を抑えめにする(総カロリーの50~60%を目標)

・塩分の多い食べ物は控える。

・みそしるやラーメンの汁は半分程度残す。

・食事の半分を野菜にすると塩分は3g程度抑えられる。

・外食1回で塩分3g程度なので、外食を1日1回やめて野菜・果物中心の食事に切り替える。

✅体重は3か月で3%の減量を目標とする(BMI25未満が最終目標)

✅1日30分 有酸素運動(ウォーキングや水泳など)

✅アルコールは缶ビール1本/日に控える。

✅禁煙

 

薬物治療

降圧薬のまとめを参照

治療抵抗性の場合は2次性高血圧症も評価する。

 

2次性高血圧症の検査

✅尿定性・沈渣

✅採血、腎機能、TSH、FT4、早朝ACTH/コルチゾール血漿アルドステロン濃度と血漿レニン活性(30分安静臥床後に採血)。

*PAC/PRA>200(もしくはPAC/ARC>40)かつPAC>120でアルドステロン症疑い

✅アルドステロン症や腎血管性高血圧を疑う場合は腹部エコー、腹部血管エコー、腹部造影CT

✅褐色細胞腫を疑う場合は、血中アドレナリン/ノルアドレナリン、24時間蓄尿(尿中アドレナリン/ノルアドレナリン、尿中メタネフリン/ノルメタネフリン)

✅簡易PSG

 

高LDL-C血症

LDL-Cの計算式

Friedewald式:TC-HDL-TG/5

TG≧400の場合や空腹時採血でない場合はFriedewald式は使用できないため、nonHDL-Cの式:TC-HDLを用いる。

 

簡易版吹田スコア

動脈硬化性疾患予防ガイドライン・エッセンス | | 循環器病の ...

 

管理目標
  LDL-C non-HDL
一次予防
生活習慣の改善
薬物療法検討
低リスク <160 <190
中リスク <140 <170
高リスク <120 <150
二次予防
生活習慣の改善
薬物療法
冠動脈疾患の既往 <100 <130

★二次予防患者でリスクのある患者の場合は管理目標はLDL-C<70

(リスク:家族性高コレステロール血症、急性冠症候群の急性期、糖尿病+非心原性脳梗塞、PAD、慢性腎不全、喫煙、メタボリックシンドローム、主要危険因子の重複)

※あくまでも努力目標であるため、LDL-Cは20~30%減を目標とする。

 

食事運動療法

栄養士のいる病院であれば栄養指導をしてもらう(食品交換表の使用など)

✅30分間/日の有酸素運動

✅1日1回は魚を食べる(肉の代わりに魚を摂る。不飽和脂肪酸を取る。大豆製品も良い)。

✅1日に両手一杯分の生野菜を食べる。(食物繊維はLDLを下げる)

✅油を使用した料理は1日2品まで(天ぷらやフライなど)。ドレッシングやマヨネーズはなるべく避ける。間食を減らす。

✅体重を3ヶ月で3%以上の減量を目標にする

✅カロリーを抑える:炭水化物を抑えめにする(総カロリーの50%~60%を目標)

✅節酒の必要はないがその分肝臓が脂肪肝になるので過度の飲酒は勧めない。

✅禁煙指導も行う。

 

治療

LDL-Cが180以上の場合食事療法3ヶ月で管理目標に達しない場合薬物療法を行う

私見だが、高リスク患者と2次予防の患者は薬物療法開始で良いと思う。

✅二次予防にはストロングスタチンの使用推奨。

★治療抵抗性の場合は2次性の原因の評価も必要。

 

スタンダードスタチン

◆10~20%低下

メバロチン5mg/日

ローコール20~30mg/日

◆20~40%低下

メバロチン20~40mg/日

リポバス5mg/日

 

ストロングスタチン

◆20~40%低下

リピトール10~20mg/日

リバロ1~2mg/日

◆40~50%低下

リピトール20~40mg/日

リバロ4mg/日

クレストール 2.5~10mg/日

◆50%以上低下

クレストール10~20mg/日

 

スタチンが使用できない場合

小腸コレステロールトランスポーター阻害剤を使用する。

ゼチーア(エゼチミブ)10㎎ 1回1錠 1日1回

 

高TG血症

✅基本的にはLDLの管理が優先される。

✅TG≧500であれば薬物療法開始。

私見だが、TG≧400であれば薬物療法開始で良いと考える

✅TG<500であれば食事運動療法⇒3~6ヶ月で目標達成できない場合は薬物治療を行う。

 

治療

◆TG<500mg/dl、LDL-C<管理目標値の場合

生活習慣の改善

⇒3~6か月後もTG>150mg/dlが持続する場合はフィブラート系またはEPA製剤を導入。

◆TG<500mg/dl、LDL-C≧管理目標の場合

生活習慣の改善

⇒3~6か月後もLDLが管理目標に達しない場合はスタチン製剤導入。

⇒LDL改善後もTG≧150の場合はEPA製剤またはニコチン酸製剤を併用。

◆TG≧500mg/dl以上の場合

フィブラート系製剤で早急に治療を開始

※TG≧500は急性膵炎のリスク高い。

 

フィブラート系

・リピディル53.3㎎ 1~2錠 分1 夕食後

(尿酸値を下げる効果がある。薬物相互作用が少ない。腎機能障害Cr2以上、胆石症、スタチン併用は原則禁忌。横紋筋融解の副作用。肝障害患者には避ける)

・腎機能障害がある場合はリポクリン200㎎ 3錠分3 毎食後

・肝障害のある場合はベザトール(腎機能による調節が必要)

・副作用が少なめで効果が高いと言われているのはパルモディア 0.1~0.2mgを2錠分2 朝・夕食後

 

EPA製剤

エパデール600㎎を1日3回内服

※抗血小板作用あり

 

ニコチン酸製剤

ユベラ300㎎~600㎎ 分3

 

脂質異常症治療薬の薬効分類
  LDL TG HDL Non-HDL
スタチン ↓↓↓ ↓↓↓
小腸コレステロールトランスポーター ↓↓ ↓↓
フィブラート ↓↓↓ ↑↑
EPA製剤      
ニコチン製剤 ↓↓

 

高尿酸血症

生活指導

✅内臓系(レバー)や魚の干物などのプリン体を多く含む食事摂取は控える。

✅飲酒(ビール以外も)を控える。

✅飲水励行。

✅尿酸値の上がる薬がないか確認する。

 

痛風発作時の治療

✅NSAIDSを使用する

(NSAIDSパルス:初日ナイキサン300mg/回を3時間毎に3回まで。翌日より400~600mg 分3で内服。)

✅NSAIDSで効果がない場合や腎機能障害・喘息などでNSAIDSが使用できない場合はステロイドの内服を使用する。プレドニゾロン15mg~30mgを内服し、1週間ごとに1/3量を減量し、3週間で終了する。

痛風発作の前兆にコルヒチン0.5mgを1錠内服すると発作が予防できるため、携帯させる。

 

安定期の治療

痛風発作合併症を伴わない場合尿酸値が9.0mg/dl以上で薬物治療開始

✅腎機能障害(クレアチニンの上昇)、尿路結石、高血圧、虚血性心疾患、耐糖能異常を合併する8.0mg/dl以上の場合は薬物治療適応。

尿酸の目標値は6.0mg/dl以下が目標

 

尿酸産生抑制薬

・第一選択は尿酸産生抑制薬

フェブリク 10mg~40mg 分1(腎機能による調節不要)もしくはアロプリノール100-300㎎/日 分3もしくはトピロキソスタット40mg 分2の内服を用いる。

・急速な尿酸値の低下を防ぐため、徐々に漸減していく。

肝機能障害が出やすいので注意。

・フェブリクは心血管イベント発症割合が多い??

 

尿酸排泄促進薬

・ベンズブロマロン(ユリノーム)50-100㎎/日(尿酸排泄促進)

基本は産生抑制薬を先に使用する。腎機能障害や腎結石には使用禁。結石を作らないように水分を多めに摂取する必要がある(1日2Lと書いてあるが、高齢者であれば1日1L程度が限界か)

 

血尿

・顕微鏡的血尿、無症候性血尿

⇒ まずは尿検査を沈査を含めて再提出を行う

※女性であれば生理のタイミングを外す

⇒ 血尿が持続する場合は下記フローチャートに従って検査をする。

・肉眼的血尿、有症候性血尿

結石、感染症、悪性腫瘍、血管の破綻(腎出血等)、糸球体性血尿の精査が必要。

⇒ 下記フローチャートに従って検査をする。尿定性・沈渣、尿細胞診、腹部エコー・腹部CT(必要に応じて造影CT)

・膀胱炎疑い

尿検査を確認し経験的に抗菌薬治療を行うことが多い。

 

フローチャート

 

蛋白尿

・尿検査を定性、沈査を含めて再検する。

・採血で腎機能の評価

UP/UCreで推定尿蛋白量を測定する。

・UP/UCreで0.5g/日以上の蛋白が出ているようであれば腎臓内科に紹介

※試験紙1+は境界領域:30㎎/dl程度なので1500mlの尿量で450㎎/日

 

  <紹介基準>

①尿蛋白5g/gCr以上、もしくは検尿試験で2+陽性

②蛋白尿と血尿が両方陽性(定性で1+以上)

③40歳未満 GFR60ml/分/1.73m²未満

④40歳以上70歳未満 GFR50ml/分/1.73m²未満

⑤70歳以上 GFR40ml/分/1.73m²未満

 

糖尿病

非専門医のための2型糖尿病診療の項を参照

 

参考文献

高血圧治療ガイドライン2019(JSH2019)

日本動脈硬化学会:動脈硬化性疾患予防ガイドライン2017年版.

 

 

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