とある内科医の病棟マニュアル

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呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

COVID-19の検査・治療(Ver.3)

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★治療の原則は厚生労働省発行の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」に従う

注)COVID-19の治療はエビデンスが少ない領域です。下記の治療内容については筆者が学会等で勉強したこと、筆者の感覚的な内容が多分に含まれています。参考程度と考えてください。

 

重症度分類

軽症:肺炎像なし

中等症Ⅰ:肺炎像あり。酸素化低下なし。

中等症Ⅱ:肺炎像あり。酸素化低下あり。

重症:侵襲的人工呼吸器管理を必要とするもの。

 

重症化リスク因子

✅65歳以上の高齢者 

✅悪性腫瘍 

COPD(喫煙歴) 

✅慢性腎臓病 

2型糖尿病 

✅免疫不全

✅高血圧 

脂質異常症 

✅肥満症(BMI 30以上) 

✅妊娠後期

 

重症化マーカー

総リンパ球数の減少、炎症反応上昇、LDH上昇、D-dimer上昇、フェリチン上昇、CK上昇、高感度トロポニンT上昇、IL-6上昇など。

IFN-λ3は中等症Ⅱ以上の症状が認められる数日前から上昇する。

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(引用:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第5.3版) 

 

実際に重症化するかどうか?

重症化マーカーの上昇や胸部CTで肺容積減少、肺血管拡張所見(Pulmonary vascular enlargement)の所見が強い場合は重症化が予測されると言われるが・・・

実際には重症化症例を判別するのは難しい!!

 

★臨床上で個人的に重要だと思うのは

①発症から何日目か(発症から7~14日で重症化することが多い)

②見た目の重症感(重症感が強い人の方が重症化しやすい)

 

検査ルーチン

血算、生化、凝固(PT、APTT、Fib、D-dimer)、血ガス、LDHHbA1c、フェリチン、トロポニンT、HBs抗原、HBc抗体、HCV抗体、QFT、IgG、IgA、IgM、KL-6、尿定性・沈査、胸部CT。測定可能であればIL-6とIFN-λ3を測定する。

 

軽症例の治療フローチャート

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中和抗体

カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ)

・重症化リスクを有する症例

・発症7日以内に単回点滴静注

酸素化低下例には適応外

濃厚接触者の発症抑制にも適応

オミクロン株の中和活性が低い(オミクロン株蔓延下ではソトロビマブを優先して使用する)

 

ソトロビマブ(ゼビュディ)

・重症化リスク因子を有する症例

・発症7日以内に単回点滴静注

酸素化低下例には適応外

濃厚接触者の発症抑制には適応外

オミクロン株の中和活性がある

 

モルヌピラビル(RNA合成酵素阻害剤)

・重症化リスク因子を有する症例

・発症5日以内

・1回800mg 1日2回 5日間内服

・催奇形性あり、服用後4日間の避妊が必要

 

中等症Ⅰの治療フローチャート

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レムデシビル(RNA合成酵素阻害剤)

・初日200mg(2V)、2日目~100mg(1V)

 2時間かけて点滴静注、5~10日間。

・抗体療法と併用可

・eGFR<30ml/minは原則投与しない(添加剤が尿細管障害を起こす)

・ALTが正常上限の5倍以上は慎重投与

 

中等症Ⅱ(酸素1~3L)の治療

✅レムデシビル+ステロイド(デキサメサゾン6mg/日等)

✅D-dimer上昇時、バリシチニブ使用時はヘパリン持注

✅バリシチニブ(オルミエント)併用も検討

 

中等症Ⅱ(酸素≧4L)の治療

ステロイドの増量

mPSL 1~2mg/kg/日、ステロイドパルス療法も検討

✅バリシチニブも併用

✅腹臥位療法

✅陰圧室でネーザルハイフロー使用を検討

 

ステロイドの投与方法

✅SPO2≦93%で

 ▸発症から1週間程度経過、CTで虚脱あり➼デキサメサゾン 6mg/日

 ▸陰影が広範囲かつ酸素需要が増加傾向➼ソル・メドロール 1~2mg/kg

✅酸素が4L以上必要➼ソル・メドロール 1~2mg/kg

✅陰影が広範囲かつmPSLでも悪化傾向➼ステロイドパルス

 

ステロイドパルス後のステロイド漸減の過程で肺炎像が増悪することがある(リバウンドと呼ぶ)。リバウンドを起こすと入院期間の延長や予後不良の割合が多くなる。

★個人的な感触ではあるが、重症例でステロイドパルス後にmPSL 1mg/kgに減量した際にリバウンドを起こしやすい印象。(mPSL 2mg/kg程度で継続したほうが良い?)

★発症から20日以上経過した症例ではリバウンドを起こす症例は少ない。

 

ヘパリンの使用方法

✅D-dimer上昇時もしくはバリシチニブを使用する場合に持注を行う

✅APTTはあまり延長させずにD-dimerを見ながらコントロールをすると良い

 

ヘパリンNa5000単位/5ml+生食15mlで使用(250単位/ml)

初回投与量は200単位/kg/日を24時間かけて持続点滴

APTTは毎日測定→安定したら2~3日おきに変更

★ATⅢを測定→低下している場合はヘパリンが効きにくくなるので補充検討

 

APTT 持続静注量
40秒以下 2単位/kg/h増量
40-44秒 1単位/kg/h増量
45-70秒 変更なし
71-80秒 1単位/kg/h減量
81-90秒 2単位/kg/h減量
90秒以上 1時間中止し3単位/kg/h減量で再開

 

バリシチニブ投与時の注意事項

使用の際はレムデシビルの併用が必須。

血栓症の副作用があり、原則として抗凝固(ヘパリン等)の併用が必須となる。

✅4mgを1日1回内服(最大14日間)、30≦eGFR<60の場合は2mgに減量、15≦eGFR<30の場合は2mgを48時間毎に内服、eGFR<15の場合は投与しない。

✅活動性肺結核の可能性がある、ALTが正常上限の5倍以上、好中球数が500未満、リンパ球が500未満、血小板が5万未満の場合は慎重投与

結核、非結核性抗酸菌症をあらかじめ評価を行う → 必要に応じてLTBIの治療やMACの治療

✅デノボ肝炎のリスク評価を行う → 必要に応じて拡散アナログ投与(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインを参照)

✅真菌感染症の評価を定期的に評価する(COVID-19関連肺アスペルギルス症などの報告例もある)

 

バリシチニブが使用できない場合に検討する治療

トシリヅマブ(アクテムラ)

✅8mg/kg(上限800mg)を静注、1回点滴(追加でもう1回点滴可)

✅見た目上、CRPが陰性化するため、感染がマスクされる可能性に注意

✅悪性腫瘍が増悪する可能性について説明が必要

✅活動性肺結核の可能性がある、ALTが正常上限の5倍以上、好中球数が500未満、リンパ球が500未満、血小板が5万未満の場合は慎重投与

結核、非結核性抗酸菌症をあらかじめ評価を行う → 必要に応じてLTBIの治療やMACの治療

✅デノボ肝炎のリスク評価を行う → 必要に応じて拡散アナログ投与(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインを参照)

✅真菌感染症の評価を定期的に評価する(COVID-19関連肺アスペルギルス症などの報告例もある)

 

胸部CTのタイミング

診断時酸素化増悪時は積極的にCTを撮像すべし!

✅肺炎像を確認し、「治療を強化するか?」、「体位をどうするか?(良い方の肺を下にする)」、「挿管が必要になりそうか?(ICUへの相談)」を判断する。

 

ECMO

 <適応>

①PEEP10㎝H₂OでP/F<100が持続する場合。

②適切な呼吸器設定でも代償できない呼吸性アシドーシスがある場合。(PH<7.15)

③Murray Score≧3

<施行中のモニタリング>

血液流量:3L/m²/min(成人では60ml/kg/min程度)

回転数:2000~3000回転程度に収まる(血流が保てるように調節, 3500以上にはしない)

Rest lung設定:FiO2<40、PEEPは10~15程度のHI-PEEP。PSは20以下、呼吸数は10回以下(permissive hypercapnia)

ACT:150~200程度を目標とし、D-dimerが上昇傾向であれば200前後で管理を

SPO2:80%以上を目安とする

SvO2:70%前後を目標に(75%以上はリサーキュレーションを考える)

送血圧:上限350mmHg

脱血圧:下限-50mmHg、上限-300mmHg

肺前圧:上限400mmHg

 

 

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