とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

ICのテンプレート

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ICのルーチンチェックリスト

入院時ICチェックリスト

原則キーパーソンの来院必須

キーパーソンがすぐに来れない場合:なるべく早めに一度は来院するようにお願いする。
*特に高齢者や未成年の場合はICと病院手続きが必要になる。
*病状が軽症で本人がしっかりした成人であれば来院は必須ではないかも・・・

✅病状説明(状態不安定・状態不良の場合は必ずキーパーソンに来院してもらう

✅今後の治療方針(特に重要な話をする場合はキーパーソン来院必須
*キーパーソンがすぐに来れない場合:緊急性が高い場合は電話でICを行い治療同意を得る。

急変時の対応確認必ずキーパーソン来院の上でICする

治療の同意書
(抑制、気管挿管、Aライン、中心静脈、造影CT、輸血、ステロイド、化学療法、その他の検査・治療の同意書など)

✅キーパーソンの変更が必要かどうか(特にキーパーソンが高齢の場合)

✅今後のICは原則「本人」と「キーパーソン」のみとすること。他の家族が話を聞きたい場合には必ずキーパーソンと一緒に来院してもらう。
(家族全員にそれぞれICするのは時間がかかりすぎる、色々な人にICをすると話が食い違う可能性がある、治療方針がまとまらない可能性がある、等の理由から)

✅他の家族と必ず情報共有を行い、家族内の意見を統一するようにお願いする。

✅夜間帯や休日は宿直医が対応する場合があること

✅病状が改善しても、ADLが低下している場合には転院になること。

✅転院先は希望通りにならない可能性があること。

 

重症患者ICセット

 ICU入室を検討

② シビアムンテラ 
*家族様にいつでも連絡がつくようにお願いする
*会わせたい人には早めに連絡をしてもらう
必要なら他科の先生ともIC
必要なら転科もお願いする

③ 今後起こりうる合併症は?その対応は?

④ 急変時DNARの確認
*挿管やBIPAP、NHFの禁忌がないか確認
*フルコースの場合:気胸のリスク、抜管困難、気管切開の説明
 ⇒ 病棟に予め挿管の準備を!、ICUに事前に連絡も!
*DNARの場合:どこまでやる?NHF?BIPAP? 気胸のリスクやせん妄でつけれない可能性を説明
 ⇒ 病棟に予めNHF/BIPAPの準備を!、ICUに事前に連絡も!

⑤ その他の治療をどこまでやる?(慢性呼吸不全のBIPAP、終末期の輸血や透析の差し控え等)

⑥(DNARの場合)状態悪化時には早めに連絡するように心掛けるが、御家族様が到着するまでに間に合わない可能性もあることを説明

⑦ 治療の同意書
(抑制、気管挿管、Aライン、中心静脈、造影CT、輸血、ステロイド、化学療法、その他の検査・治療の同意書など)

⑧ 緩和の説明・同意書(ステロイドも含めて)

⑨ 終末期の付き添いの許可(指示簿記載)

当直医に引き継ぎ必要ならICUドクターにも申し送り

⑪ 指示簿にCall基準を記載

 

退院時ICチェックリスト

■自宅退院の場合

*経過が良好であれば電話でICでも可。

*家族の希望があれば退院時に対面でIC。

✅現在の状態の説明・今後の方針

 

■転院の場合(キーパーソンの来院必須

✅現在の状態の説明・今後の見通し

急変時対応の再確認(療養型病院へ転院の場合はDNARの確認が必要)

今後のフォロー先(自分の病院でフォローするのか、転医するのか?)

転院先で悪くなったら再転院するのか?
・再増悪した場合に転院をする適応はあるか?
・転院搬送が本人の負担やリスクにならないか?(特に療養型病院に転院する患者)

✅原則、家族の付き添いが必要になる(病院手続きが必要だから)

 

同意書の取得の手順

 

DNARのICのテンプレ

超高齢者、終末期患者の場合

「現在の病気が進行した場合」は急変の可能性があります。また年齢や基礎疾患を考えると、いつ何が起きてもおかしくはない状態であると思います。急変時の対応についてお話しておく必要があります。具体的には心拍が弱くなった時に心臓マッサージ、呼吸が悪くなったときに挿管・人工呼吸器をするかどうかについてです。(所謂、延命治療と呼ばれているものです)⇒ 現時点でそこの部分についてお考えはありますか?

率直に言いますと、現在の患者さんの状態を考えると、これらの積極的延命処置はデメリットが大きく推奨されないと考えます。

理由としては

1.これらの処置は本人様への負担が非常に大きい処置です。
端的に言うと、短期間だけ延命できる可能性と引き換えに体をボロボロにしてしまう処置です。ですので、回復の余地があまりない場合はやらない方が良い処置です
(心臓マッサージは体に強い侵襲を加える処置であり、肋骨骨折や肺挫傷などの合併症が起こります。気管挿管も非常に苦痛を伴う処置であり、鎮静薬・鎮痛薬を使用して昏睡状態にさせる必要があります。意思疎通が取れなくなり、喉に管を入れるため声も出せなくなります。)

2.~様の場合、仮に延命したとしても、状態的に追加できる検査や治療が限られてしまうため、手の施しようがない状態になることがほとんどです。むしろ、人工呼吸器の合併症(気胸、VAP、離脱困難など)により、予後を短くしてしまう可能性もあります。現在では鼻やマスク型の人工呼吸器(NHFやNIPPV)を使用することで、挿管管理に近い状態までもっていけるため、やるならそういった方法の方が望ましいのではないかと考えます。

3.ですので、改善の余地がある場合(≒短期間で治る可能性が高い状況)は別として、基本的には状態が悪くなった場合には、そういった処置は行わずに、本人に負担のない範囲の治療で経過をみさせてください。必要なら緩和治療なども併用していきます。

 

不可逆性疾患の場合

現在の治療を行っても病気が進行する可能性もあり、その場合は急変の可能性があります。いつ何が起きてもおかしくはない状態であると思います。急変時の対応についてお話しておく必要があります。具体的には心拍が弱くなった時に心臓マッサージ、呼吸が悪くなったときに挿管・人工呼吸器をするかどうかについてです。(所謂、延命治療と呼ばれているものです)⇒ 現時点でそこの部分についてお考えはありますか?

率直に言いますと、現在の患者さんの状態を考えると、これらの積極的延命処置はデメリットが大きく推奨されないと考えます。

理由としては

1.これらの処置は本人様への負担が非常に大きい処置です。
端的に言うと、短期間だけ延命できる可能性と引き換えに体をボロボロにしてしまう処置です。ですので、回復の余地があまりない場合はやらない方が良い処置です
(心臓マッサージは体に強い侵襲を加える処置であり、肋骨骨折や肺挫傷などの合併症が起こります。気管挿管も非常に苦痛を伴う処置であり、鎮静薬・鎮痛薬を使用して昏睡状態にさせる必要があります。意思疎通が取れなくなり、喉に管を入れるため声も出せなくなります。)

2.~様の場合、現時点で最大限の治療を行っており、仮に延命したとしても、追加できる検査や治療がなく、手の施しようがない状態です。むしろ、人工呼吸器の合併症(気胸、VAP、離脱困難など)により、予後を短くしてしまう可能性もあります。現在では鼻やマスク型の人工呼吸器(NHFやNIPPV)を使用することで、挿管管理に近い状態までもっていけるため、やるならそういった方法の方が望ましいのではないかと考えます。

3.ですので、改善の余地がある場合(≒短期間で治る可能性が高い状況)は別として、基本的には状態が悪くなった場合には、そういった処置は行わずに、本人に負担のない範囲の治療で経過をみさせてください。必要なら緩和治療なども併用していきます。


<人工呼吸器による合併症>
回復に時間がかかると意識が戻らなくなる(低酸素脳症)、人工呼吸器が外せなくなったり(呼吸筋萎縮や肺への後遺症による人工呼吸器離脱困難/遷延性意識障害による呼吸停止)など、俗にいう『植物状態となることがある。他には気管切開の可能性、気胸、人工呼吸器関連肺炎、寝たきり等

 

リハビリ転院のICのテンプレ

①病状が安定しましたが、自宅退院は難しい状態です(病状不安定、ADL低下など)。

②リハビリ転院が必要と考えています。

③リハビリ転院の期間は2~3ヶ月程度です。その期間、短期集中でリハビリを行い、自宅退院を目指すことになります。

④自宅退院を目指しますが、リハビリの効果には個人差があるため、必ず上手くいくとは限りません。自宅退院が難しい場合は施設退院や療養型病院への転院が必要になります。

 

このまま急性期病院でリハビリをしたいです。

急性期病院には病状が不安定な患者様が他にも沢山いるため、リハビリに重きを置いたケアに十分な時間を充てることができません。そのため、リハビリ目的の転院が患者様にとって良いと考えます。
(積極的な治療が終了したら、転院が必要になります。病院にはそれぞれ役割・適応があります。積極的な治療が終了したら、他の患者様のためにベッドを譲っていただく必要があります。他の患者様の治療機会を奪うことになるため転院が必要です)

 

転院先で悪くなった場合にまた戻っても良いですか?

急性期病院での治療が妥当であれば、勿論、急性期病院への転院が適応になりますが、希望したからといって、すべての患者様が転院できるわけではありません。(例えば肺炎を起こしたとか、食事が摂れない、リハビリが進まないなど、他の病院でも対応できるものについては、その病院で対応していただきます。転院してもやれることは基本的に違いはありませんし、他の患者様の治療機会を奪うことにもなるため、転院はできません。)

また非常に状態が不安定な状態となった場合には、転院搬送自体がリスクを伴う場合もあり、その場合は転院が困難になる場合もあります。

 

療養型病院への転院のICのテンプレ

①自宅退院は非常に困難な状態です。

②自宅や施設での管理は難しく、療養型病院での経過観察が望ましいと考えます。

③状態もそこまで良い状態ではなく、今後も繰り返す可能性が高い状態であるため、再度悪化した場合に対応していただけるように療養型病院への転院が望ましいと考えています。安定すれば施設なども考慮されるかもしれません。

必要に応じて以下を追加説明

④今からお話することは、転院する患者様皆様に説明している注意事項ですが、説明させていただきます。(これを説明していないと転院先の先生が困る可能性があるのでお話します。)

DNARのIC

⑥高齢・基礎疾患もあるため、転院先で全身状態が悪くなる可能性があります。

⑦現在の状態から短期間で再燃するような場合には、残念ながら医療の限界の可能性が非常に高いと考えています。そのような状態では、病院に転院搬送すること自体もリスクになりえますし、転院してたくさん検査したり、管を入れたりすることが、本人にとって大きな負担になると考えます。治療に関しても、療養型病院と急性期病院でそこまで大きな違いはないと考えます。状態悪化時は転院先で可能な範囲内で行うのが望ましいと考えています。

 

このまま急性期病院で入院させたいです。

積極的な治療が終了したら、転院が必要になります。病院にはそれぞれ役割・適応があります。積極的な治療が終了したら、他の患者様のためにベッドを譲っていただく必要があります。他の患者様の治療機会を奪うことになるため転院が必要です。

 

療養ではなく、リハビリ転院がしたいです

リハビリ転院は自宅退院を目標に2~3ヶ月のリハビリを行うものになります。現在の状態では、そもそもリハビリができる状態ではないため、リハビリ転院は現実的ではないと思います。

 

リハビリをしたら食べれるようになりませんか?

現在の状態でご飯を食べれるようになる可能性は低いです。嚥下リハビリはご飯を食べない人に行うものではなく、ご飯は食べれるけど嚥下障害がある患者に行うものです。

 

急変時のBIPAPやNHFはどうしたら良いですか?

今回はギリギリの状態でなんとか救命できました。しかし全身状態の低下のため療養型病院へ転院することとなりました。非侵襲的人工呼吸器については、全身状態の低下や痩せが進んだ患者は外せなくなる可能性が高くなるため、今後は適応にならないと考えています。(外せなくなると御飯も食べれなくなります)。きつい状態が続く可能性が高く、今後の使用はオススメできません。呼吸状態悪化時は本人に負担のない範囲内で行うのが良いと考えます。

 

老衰・誤嚥性肺炎のターミナルのICのテンプレ

こちらを参照

 

 

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