トラブル症例対応のポイント
❶ ひとりで対応しようとしない(色々な人を巻き込む)
医長、看護師長、医療安全などの各部署の人達と一緒に対応する!
❷ 共感の姿勢で対応する(患者の意思・意見を否定しない)
自主退院します
❶ 退院/通院治療可能な状態かを考える(大丈夫そうでも、標準的な治療から逸脱する場合は安易に退院許可しない)
⇒ 退院許可できない場合は②へ
❷ 本人に入院継続を説得する。退院した場合のリスクを十分に説明する
⇒ 本人を説得できない場合は③へ
❸ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は④へ。
❹ 入院継続が困難であることを上司に報告する。
❺ 患者本人とキーパーソンの両者が退院のリスクを十分理解し納得すれば退院とする。
❻ 病院側は退院を許可していないが、本人・家族が入院診療を拒否したため退院となった旨をカルテ記載する。
❼ 念書の記入、他病院への紹介/転医も必要なら検討する。(リスク回避のため)
※転医する場合は担当の先生にしっかりと申し送りを!
❶ 本人に入院継続を説得する。退院した場合のリスク、在宅死亡の可能性を十分に説明する。
⇒ 本人を説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は③へ。
❸ 入院継続が困難であることを上司に報告し、医療安全にも相談する。
❹ 患者本人とキーパーソンの両者に退院のリスク、在宅死亡の可能性を十分説明する。急変時対応がDNARであることを確認する。納得いただければ退院の準備を進める。
⇒在宅調整のためMSW(在宅支援科)に相談する。
❺ 訪問診療/訪問看護/介護サービス等を速やかに導入する。(MSWに介入依頼、在宅での増悪や死亡に対応するため)⇒対応はこちら
※往診医にしっかりと申し送りを!(入院が必要な時はなるべく他病院に紹介するようにお願いする)
❻ 往診医のみではフォローが難しい場合は、自宅近くの病院にも紹介する(往診+通院 or バックベッドの形にする)。可能なら退院日同日の受診を促す。
※リスク回避のため自宅近くの他病院へ転医が望ましい。特に大学病院や病床制限のある急性期病院の場合は バックベッドとして機能しづらいこともあるため、長期療養が可能な他病院へ紹介する。
※担当の先生にしっかりと申し送りを!
❼ 病院側は退院を許可していないが、本人・家族が入院診療を拒否したため退院となった旨をカルテ記載する。
❽ 必要であれば念書の記入。
入院したくない
❶ 通院治療可能な状態かを考える
⇒ 通院治療が望ましくない場合は②へ
❷ 本人に入院治療を説得する。入院しない場合のリスクを十分に説明する
⇒ 説得できない場合は③へ
❸ キーパーソンに連絡し本人を説得していただく
⇒ 説得できない場合は④へ
❹ 本人を説得できなければ入院を強制することはできないことをキーパーソンに説明し、御理解いただく。
❺ 入院が説得できないことを上司に報告する。
❻ 入院治療を十分説得したが拒否された旨をカルテに記載する。
❼ 他病院への紹介/転医も必要なら検討する。(リスク回避のため)
※転医する場合は担当の先生にしっかりと申し送りを!
❶ 本人に入院治療を説得する。入院しない場合のリスク、在宅死亡の可能性を十分に説明する。
⇒ 本人を説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡し、本人を説得してもらう。
⇒ 説得できない場合は③へ。
❸ 本人を説得できなければ入院を強制することはできないことをキーパーソンに説明し、御理解いただく。
❹ 急変時DNARかどうかを確認する
❺ 入院が説得できないことを上司に報告し、医療安全にも相談する。
❻ 自宅近くの他病院に紹介・転医する。もしくは往診医に連絡し往診に入ってもらう(MSWに介入依頼)。可能なら同日の受診を促す。
※リスク回避のため自宅近くの他病院へ転医が望ましい。特に大学病院や病床制限のある急性期病院の場合は バックベッドとして機能しづらいこともあるため、長期療養が可能な他病院へ紹介する。
※担当の先生にしっかりと申し送りを!
❼ 他病院のあてがない場合は、宛名なしで診療情報提供書を作成し渡しておく。
❽ 病院側は入院を強く勧めたが、本人・家族が入院診療を拒否した旨をカルテ記載する。
❾ 必要であれば念書の記入。
※本来であれば、訪問診療/訪問看護/介護サービス等を速やかに導入したほうが良い(在宅死亡に対応するため)が、外来では在宅医療を導入する時間的余裕がないと思われる。
転院したくない、直接自宅に帰りたい
❶ リハビリや在宅調整の必要性、病院で長めの経過観察をした方が良いことを本人に説明を行う。
⇒ 本人を説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は③へ。
❸ 患者本人とキーパーソンの両者に退院のリスクを十分説明し、納得いただければ退院の準備を進める
⇒在宅調整のためMSW(在宅支援科)に介入依頼
❹ 訪問診療/訪問看護/介護サービス等を速やかに導入する。(MSWに介入依頼)
⇒対応はこちら
❺ 他病院への紹介/転医も必要なら検討する。(リスク回避のため)
※転医する場合は担当の先生にしっかりと申し送りを!
❻ 退院前カンファランスを行った後に退院。
❶ 病院で長めの経過観察をした方が良いことを本人に説明を行う。直接自宅退院をした場合の在宅死亡の可能性が高いことを十分に説明する。
⇒ 本人を説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合、もしくは在宅での看取りを希望の場合は③へ。
❸ 上司に報告し、必要なら医療安全にも相談する。
❹ 患者本人とキーパーソンの両者に退院のリスク、在宅死亡の可能性を十分説明する。(自宅での看取りも選択肢)
急変時対応がDNARであることを確認する。納得いただければ退院の準備を進める。
⇒在宅調整のためMSW(在宅支援科)に介入依頼する
❺訪問診療/訪問看護/介護サービス等を速やかに導入する。(MSWに介入依頼、在宅での増悪や死亡に対応するため)⇒対応はこちら
❻ 往診医のみではフォローが難しい場合は、自宅近くの病院へ紹介する(往診+通院 or バックベッドの形にする)。可能なら退院日同日の受診を促す。
※リスク回避のため自宅近くの他病院へ転医が望ましい。特に大学病院や病床制限のある急性期病院の場合は バックベッドとして機能しづらいこともあるため、長期療養が可能な他病院へ紹介する。
※担当の先生にしっかりと申し送りを!
❼ 退院前カンファランスを行った後に退院。
❽ 本人・家族にリスクを十分に説明の上で、在宅看取りも含めて退院となった旨をカルテ記載する。
在宅調整が整っていないが、とにかく早く自宅退院したい
❶ リハビリ転院し、在宅調整を行ったあとに自宅退院をすべきであることを説明する
⇒転院を拒否する場合は②へ
❷ 本人・キーパーソンと今後のお話をする
⇒それでも自宅退院を希望される場合は在宅調整のためMSW(在宅支援科)に介入依頼。
❸ 介護保険がおりている場合はMSW(在宅支援科)からケアマネージャーに連絡し、必要なサービス導入を依頼する。(必要なサービスはこちら)
❹ 介護保険がない場合はMSW(在宅支援科)に連絡し、一旦全額負担で介護保険を利用(暫定プラン)もしくは医療保険で最低限必要なサービス導入を依頼する。(必要なサービスはこちら)
❺ 退院前カンファランスを行った後に退院。
通院困難の場合
- 介護保険の申請
- 往診医もしくは施設嘱託医にフォローを依頼し、通院間隔を延ばす
- その他の介護サービスの導入も検討(介護サービスはこちら)
- 通院が全くできない場合は「在宅医療 or 嘱託医のいる施設へ入所」±「何かあったときのみ自宅近くの病院に入院(バックベッド)」の形にしておく
- 療養型病院での療養も検討事項
※療養病院を探す場合は病院のMSWに相談する。施設を探す場合はケアマネージャーに連絡する。
※一旦入院して、リハビリ転院後に施設探し・在宅調整もあり!
家での生活が困難の場合
- 介護保険の申請
- 自宅での生活を希望される場合は、介護サービス導入(介護サービスはこちら)
- 療養型病院(医療区分あり)や施設入所も検討する
※療養病院を探す場合は病院のMSWに相談する。施設を探す場合はケアマネージャーに連絡する。
※一旦入院して、リハビリ転院後に調整という選択肢もあり!
どうしても必要な検査や治療を拒否する場合
❶ 検査・治療の必要性を説明し、施行しない場合のデメリットを十分に説明する。
⇒説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は③へ。
❸ 本人を説得できなければ、検査や治療を強制することはできないことをキーパーソンに説明し、御理解いただく。(無理矢理行うことは傷害罪となるためできない。また無理矢理行うことで事故につながるため施行できないことを伝える)
❹ 繰り返し説得を続ける。
ハイリスクな状態の患者
❶ 検査・治療の必要性を説明し、施行しない場合のデメリット・死亡する可能性を十分に説明する。
⇒説得できない場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は③へ。
❸ 説得できないことを上司に報告し、医療安全にも相談する。
❹ 本人を説得できなければ、検査や治療を強制することはできないことをキーパーソンに説明し、御理解いただく。(無理矢理行うことは傷害罪となるためできない。また無理矢理行うことで事故につながるため施行できないことを伝える)
❺ 急変時DNARを確認する
❻ もしも意識不明となった場合には、意思決定権はキーパーソンに移ることを説明する。
ただし、キーパーソンの意向で検査や治療を行うことは本人の意思に反する行為であり、倫理的に問題がある。また、意識不明の重体となった場合には救命することは困難である。仮に治療により回復したとしても、医療者の指示に従えず事故になりかねない。よって、意思決定権がキーパーソンに移ったとしても、方針を変えるのは現実的ではないことを説明する。
❼ 繰り返し説得を続ける。
意思疎通はとれるが、患者の判断能力がない又は疑わしい場合
❶ 判断能力の確認を行う 。 必要なら精神科にコンサルトし、判断能力の有無についてカルテ記載・治療などを依頼する。
⇒判断能力がなければ②へ
❷ 検査・治療の必要性を説明し、施行しない場合のデメリットを十分に説明する。
⇒説得できない場合は②へ
❸ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒ 説得できない場合は③へ。
❹ 判断能力がないため、キーパーソンに意思決定権は移ることを説明する。ただし本人を説得できなければ、基本的に検査や治療を強制することは難しいことをキーパーソンに説明し、御理解いただく。(無理矢理行うことで事故につながるため施行できないこと、身体抑制にも限界があるため処置を強制することは困難な場合があることを伝える)
介護サービス・訪問診療/看護の導入拒否
❶ 介護サービス・訪問診療/看護の導入の必要性を十分説明する
⇒導入拒否される場合は②へ
❷ キーパーソンに連絡・来院していただき、一緒に説得してもらう
⇒説得できない場合は③へ
❸ 必要になった場合にすぐに導入できるように、「介護保険の申請」と「ケアマネージャー」の決定を行っておく(MSWに介入依頼する)
在宅死亡の可能性が高い場合
❶ 訪問診療/看護の導入の必要性を十分説明し、導入を説得する。
⇒ 説得できない場合は②へ
❷ 家族に訪問診療/看護の導入の必要性を説明した上で導入する。
※本人が拒否していても導入する(在宅死亡に対応するため)
※往診の際は家族が同席するようにする
訪問診療を導入せずに在宅死亡してしまった場合のデメリット
- 救急車を呼んだ場合は「蘇生処置」を行われることになる(DNARにならない)
- 「救急隊が到着したときにすでに死亡している場合」や「かかりつけ以外に搬送され死亡した場合」は検視になる可能性が高い。(家族が警察の取り調べを受けることになる)
- 基本的には問題にはならないが、場合によっては「保護責任者遺棄罪」が問題となったり、「解剖」になる可能性もある。
暴力・暴言の対応
❶ 暴力・暴言の理由を聞く。状況を対応したスタッフにも確認する。
⇒ 医療者側に問題がある場合には謝罪する。
❷ 強制退院にするかどうかを決める。
※看護師の意見も聞き、厳重注意に留めるか、強制退院にするかを決める。
※非常に悪質な暴力行為の場合は強制退院とする。
⇒ 厳重注意の場合は❸へ
⇒ 強制退院の場合は❹へ
❸ 本人・御家族に下記をIC
- 本来であれば強制退院になりうる案件であるが、今回は厳重注意に留めている
- 次回、暴言・暴力があった場合は強制退院とせざるを得ない
- 当院の診療体制やスタッフが合っていないかもしれない、病院のシステム上柔軟に対応することが難しい、信頼関係が崩れた状態で診療を続けても良い医療を提供することが難しいかもしれない(医療はリスクを許容しながら行うものであるから)
- 転医が望ましいと思われる。
❹ 主治医、医長、看護師長、医療安全など複数のスタッフでICを行う。
本人・家族に下記を説明する。
治療・入院に協力が得られない状態であり、スタッフの安全も確保できないため、治療継続が難しく強制退院となる。(他の医療機関でも治療は難しい可能性が高い)
今後は当院での診療は一切できないことを説明する。
⇒ ❺へ
❺ 診療情報提供書を作成し退院とする。
紹介元がある場合 ⇒ 紹介元に診療情報を作成し、申し送りも事前にしておく
紹介元がない場合 ⇒ 宛名なしの紹介状を作成、もしくは関連病院にお願いして紹介
治療に支障を来す精神疾患がある場合
❶ 治療・入院に協力が得られない状態であり治療継続は難しいことを本人・家族に説明する。
❷ 精神疾患の治療が優先であることを説明し、専門医療機関に紹介とする。
他病院に振りたいが、転医を拒否する患者
❶ 他病院でも対応可能な疾患であることを十分に説明するとともに、転医するメリットや当院でフォローするデメリットを説明する。(自宅から遠く管理が難しい、外来診療の待ち時間が長い、バックベッドとして機能しづらい等)
❷ それでも転医を拒否する場合は、病院掛け持ちも提案する ⇒ 徐々に他病院に移行する。
高度の慢性呼吸不全がある患者
❶ HOT使用中の患者で自宅生活できるのは、設置型酸素濃縮装置は7L使用まで、携帯用ボンベは、デマンドバルブなし(オキシマイザー使用中など)だと、労作時5~7Lまでが限界と思われる。(HOTについてはこちらを参照)
❷ 上記以上の酸素を使用中の患者については、病院での療養を勧める
❸ 病院で療養をしたくない患者の選択肢としては、1.労作時の低酸素を許容して生活する(突然死のリスクを説明の上で)、2.在宅医療(往診)に切り替える。家で酸素を7L以上使用したい場合には濃縮装置を2台並列で使用する。
家族に病状を言わないでほしい
❶ 治療を行う上で家族のサポートは必要不可欠であることを説明する。(家族に秘密で入院治療をすることは基本的に不可能である。また言わないことによって、後々家族と揉める結果となる場合があるため困る)
❷ 頑なに家族への連絡を拒否する場合は、その理由を聞く。家族がキーパーソンになりえないのであれば、他にキーパーソンになる人がいないか確認をする。
❸ 特別な理由がないにも関わらず、頑なに連絡を拒否している場合は、繰り返し説得を行う。基本的に家族に連絡しないというのは不可能である。
❹ 繰り返しの説得にも応じない場合は、個人情報保護の観点から勝手にお話することはできないため、状況をしっかりとカルテに記載する。治療を行う場合には上級医や医療安全にも相談して慎重に対応する。「生命、身体または財産の保護のために必要がある」と考える場合には、上級医や医療安全に相談の上で、本人の同意を得ずに家族にお伝えする。
親戚・知人・外部機関からの患者問い合わせ
追記します
保険外診療の病院への紹介状を依頼された
- 保険外診療(民間療法)は科学的な根拠がないため、お勧めはできないことを説明する。
- 民間療法の併用によって、標準治療に支障が出ると非常に危険であるため、同時併用はしないようにお願いする。
- 同一疾患に対する混合診療は認められていない。よって紹介状の作成はできないことを説明する。(最悪の場合、保険医剥奪の可能性も。)
- 情報が必要なら、受診先の病院から情報提供依頼をしてもらうように言う。
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