とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

栄養療法

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目標カロリー

実臨床では簡易法で計算することが多い。

25kcal~35kcal/kg(理想体重)で計算し、身体活動量や疾患の重症度で調節する。

軽労作、肥満、高齢者 25~30kcal/kg
通常 30kcal/kg前後
重労作、若者 35~40kcal/kg
重症患者の急性期 25kcal/kgを目標

 

ICUなどの重症例では早期経腸栄養を行い、72時間以内に目標カロリーの約80%を投与することを目標とする(Over feedingを避ける)

 

※Harris-Benedictの式も有名であるが、欧米人の計算式であるためカロリーが過剰になることに注意を要する。

 

経腸栄養か経静脈栄養か

When the gut works, use it!!

腸が使えるなら腸を使え!!

 

経管栄養ができない症例

腸管安静が必要な病態、イレウス、循環動態不安定、難治性の下痢

高カロリー輸液の開始基準

腸管がしばらく使えそうにない場合、1週間以内に15kcal/kg/日のエネルギーに到達しない場合。

 

NPC/N比

  • 蛋白質を効率良く利用するために必要なアミノ酸の量を決めるための指標。
  • 患者の病態によって、以下のようにNPC/N比を設定する。

✅一般的な入院患者:150~180程度

ICU患者などの重症患者:100前後で管理

✅透析患者、肝不全でアンモニア上昇時:200~300程度、肝不全は分岐鎖アミノ酸併用

✅慢性腎不全:500~600程度

 

*適切な製剤を使用すれば臨床で問題になることはあまりないと思うので、そこまで神経質になる必要はないのでは??

 

製剤によるNPC/N比の違い

✅経管栄養のNPC/N比:製剤により様々(特徴を理解して使用する)

✅高カロリー輸液のNPC/N比:大体の製剤が150~160で調整されている

 

蛋白量

①まず目標カロリーを設定する。

NPC/N比を設定する。

蛋白質の量を計算する。

NPC/N=100の時:蛋白量(g)=目標カロリー/20 

       Ex)1500kcalの場合、蛋白は75g

NPC/N=150の時:蛋白量(g)≒目標カロリー/30

NPC/N=200の時:蛋白量(g)≒目標カロリー/40

 

糖質

✅通常の患者では糖質を5~7g/kg/dayの範囲で調節する。

✅糖尿病患者など、厳密な栄養管理を必要とする患者の場合では、投与する総エネルギーの50%~60%を糖質として分配する。

 

脂質

✅10日~14日間はなしでも良い。

それ以上になると必須脂肪酸が欠乏するため補充が必要。

✅投与する総エネルギーの20%~40%程度を脂質に分配する。

✅投与量は1g/kg/日以上の投与は避ける。

脂肪乳剤の投与方法

✅必須脂肪酸の補充目的の場合は2日~3日おきに20g/日の脂肪製剤を投与する。エネルギー源を目的として補充する場合は毎日投与。

✅点滴で投与する場合は0.1g/kg/h以下の投与速度が推奨。(必ず単独ルートとする
※早く投与すると代謝が間に合わず、高脂血症になる可能性があると言われている。
※20%のイントラリポス製剤の場合の投与速度は、体重÷2(ml/hr)以下とする。ただしこの投与速度は実臨床上難しい場合も多く、その場合は添付文書に従って早めに投与しても良い!
10%製剤は500mlを3時間以上20%製剤は250mlを3時間以上かけて点滴

 

電解質

✅1日に必要な電解質は以下の量で調節する。

Na 1~2mEq/kg/日、K 0.5~1 mEq/kg/日

*3号液を1日3~4本入れると1日の電解質を補充できる。

(腎障害ではK制限も検討)

 

経腸栄養剤の種類と選び方

成分栄養剤

✅窒素源がアミノ酸のみ。消化に適している。また脂質が少ない。

クローン病急性期、急性膵炎、短腸症候群などが良い適応。

✅浸透圧が高いため下痢になりやすい。

 

消化態栄養剤

✅窒素源はアミノ酸やジペプチドなど吸収しやすい形となっている。

✅消化管術後、炎症性腸疾患、吸収不良患者などに適応。

✅浸透圧が高いため下痢になりやすい。

 

半消化態栄養剤

✅一般的な経管栄養はほとんどが半消化態栄養剤。

✅消化管機能が正常の患者に使用する。

 

半固形栄養剤

✅逆流が少なく誤嚥性肺炎を予防できる効果がある。

✅液状のものに比べて下痢しにくい。

✅経鼻栄養では使用できない(胃瘻患者のみ。カテーテルチップを用いて短時間で注入する)

 

経腸栄養の指示

<体位>

注入時はベッド30~45度ギャッジアップ。フラットは禁。

注入後1時間はギャッジアップを保持

<投与方法>

①間欠投与の場合

※日中で落としきるイメージ!!(7時~21時の間に落としきる)

~日より濃厚流動食【 】+白湯100mlを(2~4)時間で朝・昼・夕で投与開始。

 

注入後は1時間クランプをお願いします。

処置時には注入中止。

 

②持続投与の場合

※7時間×3で間に1時間休みを入れる!(全部で21時間で入れる計算)

~日より濃厚流動食【 】+白湯100mlを時間30mlで投与開始

※経管栄養を持続で行く場合はインスリンは持注でコントロールする!!

 

注入後は1時間クランプをお願いします。

処置時には注入中止。

 

③経口摂取と経管栄養を併用する場合

~日より濃厚流動食【 】+白湯100mlを(2~4)時間で朝・昼・夕で投与開始

経管栄養注入前に経口摂取させてください。

経口で主食5割以上摂取できた場合は経管栄養注入はスキップとします。

 

<残胃量の確認>

口腔内に栄養剤の逆流がある場合⇒投与中止しDr.call

注入後は1時間クランプを行い、その後吸引し残胃量を測定する。

残胃は毎回破棄する。

  • 残胃が投与量の半分以上が2回以上続く場合は経管を中止し、主治医相談

 

 

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