オーバービュー
鑑別
①~④の順番で考える
①まずはRed flag signの確認!(大腸型腸炎の確認)
②若年者の急性の嘔吐・下痢・心窩部不快感
⇒ ほぼほぼ急性ウイルス性胃腸炎
③高齢者(特に入院中)、抗菌薬投与後の下痢、PPI使用など
⇒ CDチェック
④その他の鑑別疾患
鑑別疾患
✅よくある急性下痢症の原因
ウイルス性胃腸炎(感冒、ノロやロタなど)、CD腸炎、下剤や腸管蠕動促進薬の内服、細菌性腸炎(カンピロバクター、サルモネラ、ブドウ球菌、腸管出血性大腸菌、ウェルシュ、ビブリオなど)、虚血性腸炎、憩室炎、薬剤性下痢症、薬剤性顕微鏡的大腸炎(Collagenous colitis、Lymphocytic colitis)、サイトメガロウイルス腸炎、炎症性腸疾患(UC、クローン病)
✅ショックなどの致死的な下痢症
アナフィラキシー、トキシックショックシンドローム(TSS)、甲状腺クリーゼ、副腎不全、セロトニン症候群
✅骨盤内炎症、腸管外感染症
腎盂腎炎、虫垂炎、急性膵炎、PID、腹膜炎
レジオネラ肺炎、インフルエンザ、SFTS、リケッチア、HIV感染症、マラリア
✅特殊な急性下痢症の原因
化学療法に伴う好中球減少性腸炎、急性心筋梗塞(Bezold-Jarisch reflex)、閉塞性腸炎(通過障害による腸炎)、サブイレウス、腸結核、赤痢、赤痢アメーバ、寄生虫、急性HIV感染症、膠原病関連、血管炎(ANCAやIgA)、ビタミンD過剰
✅慢性下痢
過敏性腸症候群、炎症性腸疾患(UC、クローン病)、大腸癌、Villous adenoma、吸収不良症候群、薬剤性腸炎(Collagenous colitis)、下剤の乱用、甲状腺機能亢進症、糖尿病、慢性膵炎、アジソン病、カルチノイド腫瘍、VIPoma、Zolliner-Ellison症候群、アミロイドーシス、膠原病関連、血管炎(ANCAやIgA)など。
※薬剤の原因
抗菌薬(βラクタム系、マクロライド、クリンダマイシン等)、下剤、プリンペラン、ナウゼリン、コリン作動薬、化学療法(TKI、ICI、イリノテカン)、ビグアナイド、αグルコシダーゼ阻害剤、PPI、NSAIDS、経管栄養(よく見る)、オルメサルタン、ジゴキシン、テオフィリン、シロスタゾールなど
薬剤性顕微鏡的大腸炎の原因薬剤:PPI、NSAIDS、H2ブロッカー、アスピリン、SSRI、αグルコシダーゼ阻害剤
最初の検査、対処
✅ウイルス性胃腸炎疑いは対症療法 ⇒ 食事がとれない・脱水がひどい場合は入院検討
*ノロウイルス抗原検査:3歳未満 or 65歳以上が保険適応
✅症状がある程度落ち着くまで欠食 or 食事形態の変更(全粥や低残渣食に)
✅入院中の患者はとりあえずCDチェック。
✅薬剤の確認(被疑薬の中止を検討)
✅整腸剤投与
症状が強い場合、持続する場合には下記を追加
✅ショックを伴う下痢:アナフィラキシー、トキシックショックシンドローム(TSS)の経験的治療と検査
✅その他の致死的な下痢症の鑑別
✅採血(血算、生化、血糖、凝固)
✅尿定性・沈査
✅血液培養
✅腹部エコー(腸管外病変の精査)、腹部CT
✅心電図(AMIの除外)
✅便培養・便鏡検:院内発症の下痢(入院3日以上)にはルーチンでの提出は不要(3day rule)
✅外来患者のall blood no stoolの場合はベロ毒素を提出。
※3day ruleの例外
「65歳以上で基礎疾患がある」「HIV患者」「好中球500以下」「集団発生」
の場合は院内発症の下痢であっても便培養を提出する。
追加の検査
✅下部消化管内視鏡
✅CDチェック、便培養
✅薬剤の再確認
✅赤沈、TSH、FT4、ACTH/コルチゾール(早朝空腹時採血)、HbA1c(腎機能が非常に悪ければグリコアルブミン)、QFT、C7-HRP、CMV-IgG(CMV腸炎の除外に有用)、抗核抗体、免疫グロブリン、IgA、MPO-ANCA、PR3-ANCA、必要に応じてHIV抗体、寄生虫抗体、便中寄生虫検査。
✅器質的病変がなければ過敏性腸症候群(IBS)?
CDチェックの解釈
抗菌薬下痢症の対処
- CDチェック
- 抗菌薬の中止
⇒ 中止不可能であれば整腸剤処方
⇒ それでもダメならアミノグリコシドやバンコマイシン、メトロニダゾールなど下痢を起こしにくい抗菌薬に変更
⇒ それも難しい場合には止痢剤を処方する
対症療法
感染性下痢を否定した上で止痢薬を使用
- ロペミン1mg 1回1~2CP 1日1~2回
- タンニン酸アルブミン 1回1g 1日3回
- TKIやイリノテカンによる下痢には半夏瀉心湯 7.5g 分3 毎食前
細菌性腸炎の経験的治療例
★抗菌薬は原則投与はしない!
★特に腸管出血性大腸菌が疑われる場合は投与しない
★重症例や免疫不全患者には抗菌薬投与を検討する。
キャンピロバクター(鶏肉)
サルモネラ(卵や調理不十分な肉)
第1選択
- LVFX 経口 1回500㎎ 1日1回 3~7日
- CPFX経口 1回300㎎ 1日2回 3~7日
第2選択
- CTRX 1回2g 1日1回 3~7日
- AZM 経口 1回500㎎ 1日1回 3~5日
原因不明の場合
キノロン系を使用する
- LVFX 経口 1回500㎎ 1日1回 3~7日
- CPFX経口 1回300㎎ 1日2回 3~7日
経管栄養で下痢をしている場合の対症療法
①経管栄養の速度を緩める
②経管栄養種類を半消化態栄養剤や半固形栄養剤に変更
③経管栄養に白湯を入れる
④食物繊維(ファイバー)の投与
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