とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

血液ガス分析の解釈

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血ガス分析の解釈の手順

①PHからアシデミアかアルカレミアかを判断する

②呼吸性か代謝性か判断する

③アニオンギャップを計算する

アニオンギャップの計算式:Na⁺-Cl⁻-HCO₃⁻

アニオンギャップの正常値:12±2

アルブミン血症がある場合の正常値:{12-(4.0-Alb)×2.5}±2

アニオンギャップ開大 ⇒ アニオンギャップ開大性代謝性アシドーシスありと判断。

④アニオンギャップが開大している場合は補正HCO₃⁻を計算する

補正HCO₃⁻=実測HCO₃⁻+ΔAG ※ΔAG=実測AG-AG正常値(通常は12)

補正HCO₃⁻が26以上の場合は「代謝性アルカローシス」合併

補正HCO₃⁻が22以下の場合は「AG正常の代謝性アシドーシス」合併

⑤代償性変化が適切か判断する(混合性障害がないか)

正常な代償範囲を超えている場合は混合性障害があると考える。

*代償性変化を考える時は、補正HCO₃⁻ではなく実測HCO₃⁻を用いて考える

 

AG開大性代謝性アシドーシス

鑑別疾患

大きく分けて4つの鑑別がある

①乳酸アシドーシスショック(敗血症や循環不全)臓器虚血(造影CTを考慮)痙攣発作後ビタミンB1欠乏、薬剤性(アルコール、メトホルミンサリチル酸アセトアミノフェン、イソニアジド、シアン化合物、鉄剤、ヌクレオシド系逆転写酵素阻害薬など)

ケトアシドーシス:糖尿病性、アルコール性、飢餓

③腎不全(尿毒症)

④薬物性メタノールエチレングリコールトルエンアスピリン中毒、サリチル酸、シアン化合物、イソニアジド、鉄剤)

 

AG正常代謝性アシドーシス(高Cl性代謝性アシドーシス)

鑑別疾患

HARD-UPと覚える。

✅下痢と尿の酸性化障害(尿細管性アシドーシス、腎不全初期)をまず考える!

H:hyperalimentation(過栄養)

A:アセタゾラミド、アジソン病

R:renal tubular acidosis(尿細管性アシドーシス)、腎不全初期

D:diarrhea(下痢)

U:ureteroenteric fistula(尿管腸瘻)

P:pancreatic fistula(膵液瘻)、parenteral saline(NaCl大量補液)

 

尿細管性アシドーシスの分類

参照:基礎疾患・原因薬剤についてのまとめは尿細管性アシドーシスとは - 医療総合QLifeを参照。

 

代謝性アルカローシス

尿Clを測定する。

鑑別疾患

・尿Cl<20mEq/Lの場合(Cl反応性代謝性アルカローシス)

有効循環血漿量の減少(脱水)、嘔吐、胃管吸引、利尿剤使用後、下痢(緩下剤の乱用)、分泌性下痢(先天性Cl下痢症など)

*循環血漿量減少 ⇒ RAA系亢進⇒ K⁺やH⁺の排泄亢進 ⇒ HCO3⁻再吸収上昇 ⇒ 血中・尿中Cl低下

・尿Cl>20mEq/Lの場合

利尿剤、低K血症(原発性アルドステロン症、偽性アルドステロン症(甘草)、クッシング症候群、腎動脈狭窄症、Bartter症候群、Gitelman症候群、Liddle症候群)

 

呼吸性アシドーシス

鑑別疾患

喘息発作、COPD(急性増悪・末期)、肺水腫、拘束性肺障害、その他重症な肺病変。

 

呼吸性アルカローシス

鑑別疾患

過換気症候群、敗血症の初期、サリチル酸中毒、肝硬変、脳幹病変、妊娠

 

酸塩基平衡のノモグラ

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(引用:内科ポケットレファレンス 第3版より引用)

 

代謝性アシドーシスの補正

PH<7.15またはHCO₃⁻<4mEq/Lの重度代謝性アシドーシスの場合には補正を検討する。

・メイロン7%・・・BE×1/4×体重(ml)を投与 

・メイロン8.4%・・・BE×1/5×体重(ml)を投与

    

 

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