とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

しびれ・異常感覚

 

 

フローチャート

 

しびれの表現

✅知覚過敏(Hyperesthesia)

✅知覚鈍麻(Hypesthesia)

✅無感覚(Anesthesia)

✅異常感覚(dysesthesia)

✅錯感覚(paresthesia)

 

Red Flag Sign

経過が急性、進行性増悪が目立つ

脳梗塞/脊髄梗塞、腫瘍、GBS、傍腫瘍性神経症候群、免疫介在性ニューロパチー(GBS、CIDP、MMN)

運動障害が目立つ

脳梗塞/脊髄梗塞、腫瘍、GBS、CIDP、多巣性運動ニューロパチー

左右非対称性

脳梗塞、脳腫瘍、血管炎、感染性など

Length dependentではない(四肢近位障害も目立つ)

⇒GBS、CIDP、神経炎、悪性リンパ腫、サルコイドーシスなど

若年発症

シャルコーマリートゥース病などの遺伝性ニューロパチー

痛みがある

⇒急性動脈閉塞症、ASO、TAO

電気生理評価が「脱髄型」

 

鑑別疾患

多発神経障害

DANG THERAPIST

 

多発単神経障害

血管炎性、肉芽腫性、自己免疫性が多い

 

単神経障害

※血管障害は神経根障害と症状が似ているので鑑別を!

 

脊髄・神経根疾患

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検査

✅分からなければ神経内科コンサルト

まずは画像検査を検討する!

片側性:頭部CT/頭部MRI⇒脊髄CT/脊髄MRI脳卒中≫脊髄・末梢)

両側性:脊髄CT/脊髄MRI(脊髄≫脳卒中

単肢:頭部CT/脊髄CT⇒頭部MRI/脊髄MRI(基本的には末梢・脊髄>脳卒中

※単肢の症状の場合に脳卒中を疑うポイント

  1. 急性発症
  2. 末梢性に矛盾する神経所見
  3. 口周りのしびれ:手口症候群(pure sensory stroke)

✅採血4本(血算、生化、血糖、凝固)、電解質(K、Mg、Ca)

✅血ガス(酸塩基平衡の異常、過換気の除外)

✅薬剤歴の確認 ⇒ 被疑薬の変更・中止。(とくに多発神経障害の時)

血流障害を疑う場合

急性動脈閉塞症を疑う場合は血ガス、造影CT(6時間以内がゴールデンタイム)、ASOやTAOを疑う場合はABI、造影CT ⇒ 循環器内科コンサルト

多発神経障害を疑う場合

スクリーニング:HbA1c被疑薬の変更・中止電解質(K、Ca)、ビタミンB1/6/12、葉酸、銅、TSH、FT4、免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)、IgG4、血清M蛋白の評価(血清蛋白分画 ⇒ Mピークがあれば血清FLC、血液・尿の免疫固定法、尿中BJP、骨髄穿刺)

追加検査:膠原病性ニューロパチーの評価(赤沈、抗核抗体、RF、抗CCP抗体、SS-A、SS-B、C3、C4、CH50、MPO-ANCAPR3-ANCA、抗ARS抗体)、ACE、可溶性IL-2R、血清SAA、ウイルス感染の除外(HIV、B肝・C肝、CMV、EBV、HTLV-1など)、神経伝導速度検査、ルンバール(髄液オリゴクローナルバンド:髄液中の抗体の有無を評価、IgG indexの測定)、障害部位が分からない場合は体性感覚誘発電位。傍腫瘍性が疑われる場合はPNS抗体(傍腫瘍性神経症候群)、自己免疫性が疑われる場合は各疾患の抗ガングリオシド抗体、MAG抗体/SGPG抗体等を提出する。必要に応じて脊髄造影MRI(上位運動ニューロン障害の除外)、神経生検(血管炎、アミロイドーシス、サルコイドーシスなど、腓腹神経の生検)を提出する。

その他:家族性アミロイドーシス、CMT、遺伝性圧脆弱性ニューロパチーの遺伝子検査など。

多発単神経障害を疑う場合(血管炎等を中心に検査を行う)

スクリーニング:HbA1c免疫グロブリン(IgG、IgA、IgM)、IgG4、血清M蛋白の評価(血清蛋白分画 ⇒ Mピークがあれば血清FLC、血液・尿の免疫固定法、尿中BJP、骨髄穿刺)、膠原病性ニューロパチーの評価(赤沈、抗核抗体、RF、抗CCP抗体、SS-A、SS-B、C3、C4、CH50、MPO-ANCAPR3-ANCA、抗ARS抗体)、ACE、神経伝導速度検査、神経生検(血管炎、アミロイドーシス、サルコイドーシスなど、腓腹神経の生検)、障害部位が分からない場合は体性感覚誘発電位など。

追加検査:可溶性IL-2R、血清SAA、ウイルス感染の除外(HIV、B肝・C肝、CMV、EBV、HTLV-1など)、ルンバール(髄液オリゴクローナルバンド:髄液中の抗体の有無を評価、IgG indexの測定)。傍腫瘍性が疑われる場合はPNS抗体(傍腫瘍性神経症候群)、自己免疫性が疑われる場合は各疾患の抗ガングリオシド抗体、MAG抗体/SGPG抗体等を提出する。必要に応じて脊髄造影MRI(上位運動ニューロン障害の除外)を提出する。

多発性硬化症や脊髄炎などの脊髄病変を疑う場合

脊髄造影MRI ⇒ 2次性の評価目的でESR、CK、ビタミンB12葉酸、TSH、FT4、免疫グロブリン、ウイルス感染の除外(HIV、B肝・C肝、CMV、EBVなど。ADEMの原因となる)、自己免疫疾患による横断性脊髄炎の評価(抗核抗体、RF、抗CCP抗体、SS-A、SS-B、C3、C4、CH50)、MPO-ANCA、PR3-ANCA、ACE、可溶性IL-2R、抗カルジオリピン抗体、カルジオリピンβ2グリコプロテイン、ループスアンチコアグラント、抗アクアポリン4抗体、MOG抗体、HTLV-1抗体、傍腫瘍性が疑われる場合はPNS抗体(傍腫瘍性神経症候群)、ルンバール(髄液オリゴクローナルバンド:髄液中の抗体の有無を評価、IgG indexの測定)、神経伝導速度検査、障害部位が分からない場合は体性感覚誘発電位など。

神経根障害を評価する場合

脊椎X線(前屈位・後屈位)と脊髄MRI整形外科コンサルト

絞扼性神経障害の評価する場合

障害部位のMRI、神経伝導速度検査 ⇒ 整形外科コンサルト

近位筋優位の脱力の場合

MMT評価、CKアイソザイム、アルドラーゼ、筋肉のMRI、針筋電図、抗アセチルコリン受容体抗体、Musk抗体、胸腺の評価、TSH、FT4。炎症性筋疾患が疑われる場合には炎症性ミオパチーの項を参照。悪性腫瘍が疑われる場合は抗VGCC抗体など。

間欠性跛行の場合

脊柱管狭窄症やヘルニアを疑う場合は脊髄MRI。ASOやTAOを疑う場合はABI、造影CT ⇒ 循環器内科コンサルト

✅運動ニューロン疾患の評価(ALS等)

 

対症療法

虚血性のしびれ

オパルモン錠5μg 3錠分3 毎食後

 

末梢神経障害によるしびれ

メチコバール500μg 3錠分3 毎食後

 

神経障害性疼痛

メチコバール500μg 3錠分3 毎食後

② ガバペンチノイド

  • リリカ 25mg 1錠 眠前(もしくは朝・眠前)より開始。腎機能による調節が必要
    (眠気やふらつきの副作用が強いので、少量から1~3日毎に漸増していく。)
  •  タリージェ 5mg 2錠分2 朝・夕食後より徐々に漸増する。

SNRIや三環系抗うつ薬

 

化学療法による神経障害性疼痛(特にプラチナ系)

サインバルタ20mg 1CP 眠前より開始 ⇒ 60mgまで増量可

 

 

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オピオイドの使い方

 

 

WHO方式三段階鎮痛法

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鎮痛薬使用の5原則

✅経口的に(by mouth)

✅時刻を決めて規則正しく(by the clock)

✅除痛ラダーにそって効力の順に(by the ladder)

✅患者ごとの個別的な量で(for the individual)

✅その上で細かい配慮を(with attention to detail)

 

オピオイドの使い分け

  • 基本は内服薬
  • 内服困難な場合は貼付剤や注射剤
  • 痛みが非常に強い場合は一時的に持続注射に変更も考慮

 

オピオイドの内服の使い方

オキシコドン

ベース

オキシコンチン 5mg×2→10mg×2→15mg×2→・・・ 8時と20時に内服

 

レスキュー

オキノーム 1日のベース量の1/6~1/4で使用。

1時間空けて追加内服可。(回数制限なし)

 

吐き気と便秘の副作用が出やすいので、あらかじめ以下を処方する。

①ノバミン5mg 3T3×食後 ⇒ 数日で頓服に変更する(数日で耐性が生じる)

②マグミット330mg 3T3×(自己調節可)

プルゼニド12mg 2錠眠前(自己調節可)

 

フェントステープ

気管支喘息は禁忌!肝機能障害に注意。

ベース

・フェントステープ 0.5mg→1.0mg→2.0mg→3.0mg→4.5mg→6.0mg・・・

 

レスキュー

アブストラル 

・初回投与量は100μgからスタートするようにする。

・1回の上限は800μg

 

①痛むときアブストラル100μgを1錠を舌下投与。30分たっても十分な鎮痛が得られない場合はさらに1錠追加内服可。

②追加内服を行っても4時間以内に痛みがある場合は「以前に使用していたレスキュー」を使用する。

アブストラルは4時間あけて1日4回まで(追加内服を含めて1日8回まで)

 

吐き気と便秘の副作用が出やすいので、あらかじめ以下を処方する。

①ノバミン5mg 3T3×食後 ⇒ 数日で頓服に変更する(数日で耐性が生じる)

②マグミット330mg 3T3×(自己調節可)

プルゼニド12mg 2錠眠前(自己調節可)

 

モルヒネ

※腎機能障害(eGFR<30)は原則禁忌

ベース

・MSコンチン 10mg×2→20mg×2→30mg×2→・・・

 

レスキュー

オプソ5mg 1包 1時間空けて反復可。(回数制限なし)

 

オピオイドタイトレーション

✅NRS>3が続く場合や3回以上/日のレスキューがある場合は30%~50%のベースアップを行う。

レスキューの合計量 or 50%増量 いずれか少ない方を採用する(過量投与にならないように)

モルヒネ換算で120mg/日以上の場合や高齢者、全身状態不良の患者等の場合は30%の増量とする。

 

✅増量間隔は持続皮下注射(静注)では24時間毎、徐放製剤では48時間毎、フェンタニル貼付剤では72時間毎を原則とする。

 

オピオイドの点滴の使い方

基本組成

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点滴早見表

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モルヒネ点滴の指示テンプレ

モルヒネの組成:

■時間~mlより開始

■ベースアップ:意識清明・RR≧10回を確認して8時間毎に増量可(以下の順で増量)

①~ml/hr ⇒ ②~ml/hr ⇒ ③~ml/hr ・・・

■頓用:①呼吸苦の訴えがある場合、または②RR≧24回の場合に使用。

意識清明・RR≧10回を確認して、1時間早送り。30分あけて反復使用可。

 

オキファスト・フェンタニル点滴の指示テンプレ

■オキファスト・フェンタニルの組成:

■時間~mlより開始

■ベースアップ:意識清明・RR≧10回を確認して8時間毎に増量可(以下の順で増量)

①~ml/hr ⇒ ②~ml/hr ⇒ ③~ml/hr ・・・

■疼痛時頓用:意識清明・RR≧10回を確認して、1時間早送り。30分あけて反復使用可。

 

オピオイド換算表

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オピオイドスイッチングの適応

①副作用が強く、オピオイドの投与継続や増量が困難な場合

②鎮痛効果が不十分な場合

 

オピオイドスイッチングのやり方

12時間徐放性経口薬→貼付剤

 

12時間徐放性経口薬→注射薬

 

12時間徐放性経口薬→24時間徐放性経口薬

 

24時間徐放性経口薬→貼付剤

 

24時間徐放性経口薬→注射薬

 

貼付剤→注射薬

 

貼付剤→経口薬

 

注射薬→経口薬

 

注射薬→貼付剤

 

 

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COVID-19の検査・治療(Ver.3)

 

 

★治療の原則は厚生労働省発行の「新型コロナウイルス感染症 診療の手引き」に従う

注)COVID-19の治療はエビデンスが少ない領域です。下記の治療内容については筆者が学会等で勉強したこと、筆者の感覚的な内容が多分に含まれています。参考程度と考えてください。

 

重症度分類

軽症:肺炎像なし

中等症Ⅰ:肺炎像あり。酸素化低下なし。

中等症Ⅱ:肺炎像あり。酸素化低下あり。

重症:侵襲的人工呼吸器管理を必要とするもの。

 

重症化リスク因子

✅65歳以上の高齢者 

✅悪性腫瘍 

COPD(喫煙歴) 

✅慢性腎臓病 

2型糖尿病 

✅免疫不全

✅高血圧 

脂質異常症 

✅肥満症(BMI 30以上) 

✅妊娠後期

 

重症化マーカー

総リンパ球数の減少、炎症反応上昇、LDH上昇、D-dimer上昇、フェリチン上昇、CK上昇、高感度トロポニンT上昇、IL-6上昇など。

IFN-λ3は中等症Ⅱ以上の症状が認められる数日前から上昇する。

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(引用:新型コロナウイルス感染症 診療の手引き 第5.3版) 

 

実際に重症化するかどうか?

重症化マーカーの上昇や胸部CTで肺容積減少、肺血管拡張所見(Pulmonary vascular enlargement)の所見が強い場合は重症化が予測されると言われるが・・・

実際には重症化症例を判別するのは難しい!!

 

★臨床上で個人的に重要だと思うのは

①発症から何日目か(発症から7~14日で重症化することが多い)

②見た目の重症感(重症感が強い人の方が重症化しやすい)

 

検査ルーチン

血算、生化、凝固(PT、APTT、Fib、D-dimer)、血ガス、LDHHbA1c、フェリチン、トロポニンT、HBs抗原、HBc抗体、HCV抗体、QFT、IgG、IgA、IgM、KL-6、尿定性・沈査、胸部CT。測定可能であればIL-6とIFN-λ3を測定する。

 

軽症例の治療フローチャート

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中和抗体

カシリビマブ/イムデビマブ(ロナプリーブ)

・重症化リスクを有する症例

・発症7日以内に単回点滴静注

酸素化低下例には適応外

濃厚接触者の発症抑制にも適応

オミクロン株の中和活性が低い(オミクロン株蔓延下ではソトロビマブを優先して使用する)

 

ソトロビマブ(ゼビュディ)

・重症化リスク因子を有する症例

・発症7日以内に単回点滴静注

酸素化低下例には適応外

濃厚接触者の発症抑制には適応外

オミクロン株の中和活性がある

 

モルヌピラビル(RNA合成酵素阻害剤)

・重症化リスク因子を有する症例

・発症5日以内

・1回800mg 1日2回 5日間内服

・催奇形性あり、服用後4日間の避妊が必要

 

中等症Ⅰの治療フローチャート

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レムデシビル(RNA合成酵素阻害剤)

・初日200mg(2V)、2日目~100mg(1V)

 2時間かけて点滴静注、5~10日間。

・抗体療法と併用可

・eGFR<30ml/minは原則投与しない(添加剤が尿細管障害を起こす)

・ALTが正常上限の5倍以上は慎重投与

 

中等症Ⅱ(酸素1~3L)の治療

✅レムデシビル+ステロイド(デキサメサゾン6mg/日等)

✅D-dimer上昇時、バリシチニブ使用時はヘパリン持注

✅バリシチニブ(オルミエント)併用も検討

 

中等症Ⅱ(酸素≧4L)の治療

ステロイドの増量

mPSL 1~2mg/kg/日、ステロイドパルス療法も検討

✅バリシチニブも併用

✅腹臥位療法

✅陰圧室でネーザルハイフロー使用を検討

 

ステロイドの投与方法

✅SPO2≦93%で

 ▸発症から1週間程度経過、CTで虚脱あり➼デキサメサゾン 6mg/日

 ▸陰影が広範囲かつ酸素需要が増加傾向➼ソル・メドロール 1~2mg/kg

✅酸素が4L以上必要➼ソル・メドロール 1~2mg/kg

✅陰影が広範囲かつmPSLでも悪化傾向➼ステロイドパルス

 

ステロイドパルス後のステロイド漸減の過程で肺炎像が増悪することがある(リバウンドと呼ぶ)。リバウンドを起こすと入院期間の延長や予後不良の割合が多くなる。

★個人的な感触ではあるが、重症例でステロイドパルス後にmPSL 1mg/kgに減量した際にリバウンドを起こしやすい印象。(mPSL 2mg/kg程度で継続したほうが良い?)

★発症から20日以上経過した症例ではリバウンドを起こす症例は少ない。

 

ヘパリンの使用方法

✅D-dimer上昇時もしくはバリシチニブを使用する場合に持注を行う

✅APTTはあまり延長させずにD-dimerを見ながらコントロールをすると良い

 

ヘパリンNa5000単位/5ml+生食15mlで使用(250単位/ml)

初回投与量は200単位/kg/日を24時間かけて持続点滴

APTTは毎日測定→安定したら2~3日おきに変更

★ATⅢを測定→低下している場合はヘパリンが効きにくくなるので補充検討

 

APTT 持続静注量
40秒以下 2単位/kg/h増量
40-44秒 1単位/kg/h増量
45-70秒 変更なし
71-80秒 1単位/kg/h減量
81-90秒 2単位/kg/h減量
90秒以上 1時間中止し3単位/kg/h減量で再開

 

バリシチニブ投与時の注意事項

使用の際はレムデシビルの併用が必須。

血栓症の副作用があり、原則として抗凝固(ヘパリン等)の併用が必須となる。

✅4mgを1日1回内服(最大14日間)、30≦eGFR<60の場合は2mgに減量、15≦eGFR<30の場合は2mgを48時間毎に内服、eGFR<15の場合は投与しない。

✅活動性肺結核の可能性がある、ALTが正常上限の5倍以上、好中球数が500未満、リンパ球が500未満、血小板が5万未満の場合は慎重投与

結核、非結核性抗酸菌症をあらかじめ評価を行う → 必要に応じてLTBIの治療やMACの治療

✅デノボ肝炎のリスク評価を行う → 必要に応じて拡散アナログ投与(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインを参照)

✅真菌感染症の評価を定期的に評価する(COVID-19関連肺アスペルギルス症などの報告例もある)

 

バリシチニブが使用できない場合に検討する治療

トシリヅマブ(アクテムラ)

✅8mg/kg(上限800mg)を静注、1回点滴(追加でもう1回点滴可)

✅見た目上、CRPが陰性化するため、感染がマスクされる可能性に注意

✅悪性腫瘍が増悪する可能性について説明が必要

✅活動性肺結核の可能性がある、ALTが正常上限の5倍以上、好中球数が500未満、リンパ球が500未満、血小板が5万未満の場合は慎重投与

結核、非結核性抗酸菌症をあらかじめ評価を行う → 必要に応じてLTBIの治療やMACの治療

✅デノボ肝炎のリスク評価を行う → 必要に応じて拡散アナログ投与(日本肝臓学会:免疫抑制・化学療法により発症するB型肝炎対策ガイドラインを参照)

✅真菌感染症の評価を定期的に評価する(COVID-19関連肺アスペルギルス症などの報告例もある)

 

胸部CTのタイミング

診断時酸素化増悪時は積極的にCTを撮像すべし!

✅肺炎像を確認し、「治療を強化するか?」、「体位をどうするか?(良い方の肺を下にする)」、「挿管が必要になりそうか?(ICUへの相談)」を判断する。

 

ECMO

 <適応>

①PEEP10㎝H₂OでP/F<100が持続する場合。

②適切な呼吸器設定でも代償できない呼吸性アシドーシスがある場合。(PH<7.15)

③Murray Score≧3

<施行中のモニタリング>

血液流量:3L/m²/min(成人では60ml/kg/min程度)

回転数:2000~3000回転程度に収まる(血流が保てるように調節, 3500以上にはしない)

Rest lung設定:FiO2<40、PEEPは10~15程度のHI-PEEP。PSは20以下、呼吸数は10回以下(permissive hypercapnia)

ACT:150~200程度を目標とし、D-dimerが上昇傾向であれば200前後で管理を

SPO2:80%以上を目安とする

SvO2:70%前後を目標に(75%以上はリサーキュレーションを考える)

送血圧:上限350mmHg

脱血圧:下限-50mmHg、上限-300mmHg

肺前圧:上限400mmHg

 

 

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DKA、HHSの治療

 

 

DKA、HHSの誘因

The I's

Infection(感染症、シックデイ)

Inflammation(急性膵炎、熱傷など)

Insulin(1型DM、糖尿病治療のアドヒアランス不良)

Iatrogenesis(ステロイド、SGLT-2阻害剤など)

Infarction/Ischemia(虚血、梗塞)

Intoxication(アルコール、コカイン)

Infant(妊娠)

 

DKAの重症度分類(ADA)とHHSの鑑別

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DKAとHHSは連続した病態であり、双方の特徴をもつ場合もある。

 

検査・処置

ICU入室Aライン留置を検討

⇒ CVIIで補正を開始

感染症のwork upを忘れない!(fever work up)

✅採血4本、尿検査(ケトン体の評価)、血ガス(アシドーシスの評価)、血液培養、プロカルシトニン、電解質、P、Ca、Mg、HbA1c、Amy、T-chol、TG、CK、血漿浸透圧、抗GAD抗体、抗IA-2抗体、血中ケトン分画(AKAとの鑑別)、凝固(DICの評価)、血中インスリンインスリン未使用の場合)、血中Cペプチド、TSH、FT4、CK上昇あればCK-MBとトロポニンT追加、Amy上昇あればP-Amyや腹部エコー/腹部造影CTの評価(急性膵炎や膵腫瘍の評価)。

✅胸腹CT(fever workup目的)

✅心エコー(大量補液するため)

✅尿バルーン留置

✅心電図

✅必要に応じてクッシング症候群や褐色細胞腫などの精査。

 

治療・モニタリング

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食事開始とインスリン皮下注射に切り替えるタイミング

DKA

「血糖≦200mg/dl」かつ「経口摂取可能」かつ以下のうち2項目以上満たす場合はインスリン皮下注射に変更食事再開

✅アニオンギャップ≦12mEq/L(尿中ケトン体はしばらく陽性になるので使えない)

✅HCO₃⁻≧15mmol/L

✅PH>7.3

 

HHS

「血糖≦200mg/dl」かつ「経口摂取可能」かつ以下の2項目を満たす場合はインスリン皮下注射に変更食事再開

✅意識レベル改善

血漿浸透圧≦320 mOsm/kg

 

 

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睡眠導入剤

 

 

薬剤まとめ

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治療のポイント

✅不眠の原因がないかを確認する

睡眠時無呼吸症候群、むずむず足症候群、うつ病、不安障害、疼痛、前立腺肥大、排尿障害、薬剤性(ステロイド、アルコールなど)、認知症パーキンソン病心不全COPD気管支喘息、GERD、甲状腺機能異常、関節リウマチ、アトピー性皮膚炎。

✅睡眠衛生指導を行う

  • 就寝の4時間前以降のカフェイン摂取を控える
  • 日中の運動を励行
  • 昼寝はなるべく短時間にする
  • 寝る前のスマホやパソコンの使用を控える
  • 入浴は就寝の1~2時間前とする
  • 飲酒量を減らす・寝酒を控える(睡眠の質が落ちる)

睡眠薬は2剤まで、抗不安薬と併せて3剤までが保険適応

メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬、ルネスタ以外は30日の投与制限あり

初期治療はオレキシン受容体拮抗薬もしくは鎮静系抗うつ薬が第一選択と考えてよい
⇒ 初期治療が上手くいかない場合、不眠のタイプで治療薬を使い分けていく。(入眠困難中途覚醒早朝覚醒、熟眠困難など)

✅なるべく副作用の少ない睡眠導入剤を選ぶようにする

高齢者では中時間、長時間作用型はなるべく用いない!

(転倒のリスク、持ち越し効果による覚醒低下・翌晩の入眠困難を起こすため)

せん妄患者ではBZ系/非BZ系は使用しない

ベンゾジアゼピン系(特に超短時間/短時間作用型)は長期投与で耐性や依存が起こりやすいため、漫然と使用しない。必ず漸減・中止を試みる。

※耐性:薬が効かなくなる
※依存:薬の量が増える、減薬時に離脱症状(不眠、震え、せん妄、幻覚など)が起こる。

✅中時間作用型、長時間作用型は耐性、筋弛緩作用、持ち越し効果が問題となる。(半減期が12時間以上のものが多い)

 

不眠のタイプ別処方例

まず最初の第一選択

以下の①または②を使用する(併用可)。
待てる不眠症であれば③の使用も検討する。

 

① ベルソムラ(15mg/20mg) 1錠 or デエビゴ(2.5mg/5mg) 1錠内服

・悪夢の副作用がみられることがある。

・CAMとの併用禁忌。

・頓服で使用可。

 

デジレル 25~50mg 眠前 or テトラミド 10~30mg 眠前

・眠りが浅い、塾眠感がない、夢を見やすいなどの人に有効。

・頓服で使用可。

 

③ ロゼレム8mg 1錠内服

・即効性はなく、効果が出るまでに1~2週間かかる。

・睡眠覚醒リズム障害の患者にも有用。就寝の4~8時間前に内服するとよい。

 

入眠困難

① ベルソムラ(15mg/20mg) 1錠 or デエビゴ(2.5mg/5mg) 1錠内服

・悪夢の副作用がみられることがある。

・CAMとの併用禁忌。

・頓服で使用可。

 

② ルネスタエスゾピクロン)1~2mg 1回 内服(若い人なら3mgまで増量可)

・筋弛緩作用が少なく、高齢者でも使用しやすい。

 

マイスリーゾルピデム)5mg 1回1~2錠 内服

・高齢者ではせん妄の発症がやや多い。

 

不安があり眠れない、眠れるか不安、肩こりがある

① ルネスタエスゾピクロン)1~2mg 内服(若い人なら3mgまで増量可)

・抗不安作用も少しあるため有用

 

レンドルミン 0.25mg 1錠内服

入眠障害中途覚醒のある不眠症に最もよく使用される睡眠薬

・抗不安作用もある

・短時間作用型の中では半減期が比較的長く、中途覚醒にも有用

・習慣性や依存性が他のBZ系に比べてやや少ない

 

マイナートランキライザー抗不安薬)の追加

デパスエチゾラム) 0.25~1.0mg 1回 眠前内服

 

中途覚醒早朝覚醒、熟眠感がない

レンドルミン 0.25mg 1錠内服

 

ユーロジンエスタゾラム)1mg 1回1~3錠内服

・中時間作用型の中では比較的安全に使用しやすい

 

ドラール(クアゼパム)15mg 1錠内服

・習慣性が少なめ

・筋弛緩作用がやや少なめで高齢者に使用する場合もある

 

抗うつ薬の追加

以下より一剤を選択する。睡眠深度を深める効果がある。

デジレル 25~50mg 眠前

リフレックス(ミルタザピン)7.5~15mg 眠前内服

トリプタノール5~10mg 1回 眠前内服

 

悪夢を見る

オレキシン受容体拮抗薬は中止。三環系抗うつ薬を処方。

デジレル 25~50mg 眠前

トリプタノール5~10mg 1回 眠前内服

・REM睡眠を減らす効果がある

 

せん妄ハイリスク患者やせん妄発症患者での追加の睡眠導入剤

① ベルソムラ(15mg/20mg) 1錠 or デエビゴ(2.5mg/5mg) 1錠内服

デジレル 25~50mg 眠前 or テトラミド 10~30mg 眠前

 

睡眠導入剤のやめ方

漸減法

薬の量を少しずつ減らしていく

f:id:kodomonotsukai:20220321153602p:plain

 

隔日法

薬の量を減らしながら、間隔も少しずつ延ばしていく

f:id:kodomonotsukai:20220321153655p:plain

 

置換法

作用時間の長い薬に変更しながら漸減法・隔日法で減らしていく

f:id:kodomonotsukai:20220321153800p:plain

 

(引用:不眠に悩む人は必見 「睡眠薬」との上手な付き合い方|NIKKEI STYLE

 

 

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凝固異常

 

 

血液凝固カスケード

f:id:kodomonotsukai:20220404010701p:plain外因系:Ⅲ、Ⅶ(3+7=10)

内因系:Ⅷ、Ⅸ、Ⅺ、Ⅻ

共通系:Ⅰ、Ⅱ、Ⅴ、Ⅹ(2×5=10)

 

鑑別疾患

※リバーロキサバン・エドキサバン:APTTよりもPTが延長しやすい

※ダビガトラン:APTTが延長しやすい

※アピキサバン:PT・APTTともに延長しにくい

 

検査

PTのみの延長の場合

✅薬剤性の除外(抗凝固薬やその他の薬剤)。

✅検査の再検(検査の不備や検体採取の問題の可能性)

✅DIC、肝硬変、肝不全の除外

生化学(AST、ALT、ALP、γ-GTPコリンエステラーゼ、TP、Alb)、凝固(PT、APTT、Fib、FDP、D-dimer、ATⅢ)、腹部エコーなど

✅ビタミンK欠乏の診断

ビタミンK分画測定、PIVKA-Ⅱ(ビタミンK欠乏で上昇)、ビタミンK補充してみる、抗菌薬の使用や胆道系疾患の既往の有無の確認

✅第Ⅶ因子活性

低下している場合はクロスミキシング試験、第Ⅶ因子インヒビター測定

 

※凝固因子活性:低下している場合は凝固因子の欠乏、消費、インヒビター産生など

※クロスミキシング試験:正常血漿に患者血漿を混合する→凝固が延長する場合はインヒビターあり。

 

APTTのみ延長の場合

✅薬剤性の除外(抗凝固薬やその他の薬剤)

✅検査の再検(検査の不備や検体採取の問題の可能性)。

✅凝固(PT、APTT、Fib、FDP、D-dimer、ATⅢ)、RF、抗核抗体、IgG、IgA、IgM、vWF活性(リストセチン・コファクター活性)、第Ⅸ因子活性、第Ⅷ因子関連抗原(フォン・ヴィレブランド因子抗原)、第Ⅷ因子活性、第Ⅹ因子活性、第Ⅺ因子活性、第Ⅻ因子活性、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体。

血友病が疑われる場合はクロスミキシング試験とインヒビターの測定を行う。(Ⅷ因子のインヒビターが最も多い)

✅vWDが疑われる場合は血小板凝集能検査も追加。

 

※凝固因子活性:低下している場合は凝固因子の欠乏、消費、インヒビター産生など

※クロスミキシング試験:正常血漿に患者血漿を混合する→凝固が延長する場合はインヒビターあり。

 

PT、APTTともに延長

✅薬剤性の確認(抗凝固薬やその他の薬剤)

✅検査の再検(検査の不備や検体採取の問題の可能性)。

✅DIC、肝硬変、肝不全の除外。無フィブリノーゲン血症の確認。

生化学(AST、ALT、ALP、γ-GTPコリンエステラーゼ、TP、Alb)、凝固(PT、APTT、Fib、FDP、D-dimer、ATⅢ)、腹部エコーなど

✅ビタミンK欠乏の診断

ビタミンK分画測定、PIVKA-Ⅱ(ビタミンK欠乏で上昇)、ビタミンK補充してみる、抗菌薬の使用や胆道系疾患の既往の有無の確認

✅RF、抗核抗体、IgG、IgA、IgM、vWF活性(リストセチン・コファクター活性)、第Ⅴ因子活性、第Ⅶ因子活性、第Ⅸ因子活性、第Ⅷ因子関連抗原(フォン・ヴィレブランド因子抗原)、第Ⅷ因子活性、第Ⅹ因子活性、第Ⅺ因子活性、第Ⅻ因子活性、ループスアンチコアグラント、抗カルジオリピン抗体、抗カルジオリピンβ2グリコプロテインⅠ複合体抗体、フォスファチジルセリン依存性抗プロトロンビン抗体。

血友病が疑われる場合はクロスミキシング試験とインヒビターの測定を行う。

✅プロトロンビン欠乏(非常に稀)を疑うならプロトロンビン活性やプロトロンビン抗原。

 

※凝固因子活性:低下している場合は凝固因子の欠乏、消費、インヒビター産生など

※クロスミキシング試験:正常血漿に患者血漿を混合する→凝固が延長する場合はインヒビターあり。

 

PT、APTTともに正常で出血傾向がある場合

✅抗血小板薬の投与や血小板数の確認。

✅老人性紫斑病、アッヘンバッハ症候群などの可能性

✅紫斑病の鑑別

✅出血時間の確認(Duke法、Ivy法)、血小板凝集能測定、毛細血管抵抗試験

✅第ⅩⅢ因子測定。

 

 

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胸水の対応とドレーンの管理

 

 

主な鑑別疾患

★片側性胸水の場合は滲出性胸水の可能性高いため、胸水穿刺を積極的に考慮する

 

胸水検査のフローチャート

 

胸水の検査

排液は1日1000mlまで(抜きすぎると再膨張性肺水腫になる)

細胞数、細胞分画、糖、アミラーゼ、LDH、pH、細胞診(悪性胸水の場合は3回提出することで感度上昇)、悪性所見がある場合はセルブロック作成(免染で原発巣や病理像の推定、必要に応じて遺伝子検索もできる)、胸水一般・抗酸菌塗抹、一般培養(嫌気培養も提出。血液培養ボトルで培養すると感度上昇)、抗酸菌培養、Tb-PCR、ADA、コレステロール、総蛋白(TG)、ヒアルロン酸CEA、CYFRA(胸水中のシフラ上昇+細胞診で腺癌の場合は胸膜中皮腫を疑う)、ヘマトクリット、RF、膠原病を積極的に疑う場合は胸水中の抗核抗体や補体。乳び胸水の場合はズダンⅢ染色悪性リンパ腫を疑う場合は胸水のフローサイトメトリー

✅心エコー(滲出性でも漏出性でも評価したほうが無難)

✅胸部エコー(穿刺部位と被包化の評価)

✅胸部・腹部CT(膿胸、肺塞栓、胸膜病変の評価には造影CT特に胸膜病変は造影じゃないと分かりにくい時がある!腹部はMeigs腫瘍や肝胆道系の鑑別)

 

その他の必要な検査

★滲出性・漏出性の鑑別はこちらを参照

漏出性胸水の場合

✅血液検査:一般採血に加えて、肝腎機能、Alb、TP、BNP、PT、ChE、TSH、FT4

✅尿定性・沈査(ネフローゼなどの評価)

✅腹部エコー(肝硬変などの評価)

✅心エコー(心不全・肺高血圧の評価)

⇒原因に応じて追加検査・治療。

 

滲出性胸水の場合

✅血液検査:一般採血に加えて、凝固、蛋白分画、QFT、抗MAC抗体、β-Dグルカン、アスペルギルス抗原、クリプトコッカス抗原、IgG、IgA、IgM、IgG4、抗核抗体、RF、抗CCP抗体、SS-A、SS-B、MPO-ANCA、PR3-ANCA、フェリチン、ACE、CEA、CYFRA、可溶性IL-2Rなど。悪性胸膜中皮腫を疑うなら可溶性メソテリン

✅喀痰培養、血液培養

✅全身CT(膿胸・血胸・肺塞栓を疑うなら造影CT)

✅原因が分からない場合は胸膜生検

✅特殊な検査として胸水のネオプテリン(尿毒症性胸膜炎の検査)、胸水中グルココール(胆汁性の胸膜炎の精査)、胸水のフローサイトメトリー(悪性リンパ腫疑い)。

✅アミロイドーシスを疑う場合 

  • AL型(限局性が多い)の評価は、血清M蛋白の評価、血清遊離軽鎖、尿中BJ蛋白、骨髄穿刺の評価を行う。
  • AA型(全身性が多い)の評価は、血清アミロイドA、尿検査、抗核抗体、RF、抗CCP抗体、SS-A、SS-B、QFT、消化管内視鏡(生検、炎症性腸疾患の評価)、腸管・肝臓・骨髄・皮膚・腹壁脂肪からの生検、腎障害があれば腎生検、心アミロイドーシスの評価(心電図、心エコー、必要に応じて心生検、シンチ)、神経症状がある場合は神経生検、神経伝導速度検査。

 

胸水検査の解釈

Lightの基準

以下のうち1つでも満たせば滲出性と判断する

  • 胸水蛋白/血清蛋白>0.5
  • 胸水LDH/血清LDH>0.6
  • 胸水LDH>血清LDH正常上限値の2/3

 

Heffnerの基準

以下のうち1つでも満たせば滲出性と判断する。

 

✅利尿剤が投与されている場合は胸水TPが上昇し滲出性に見える場合があるため注意。

✅胸水中のBNP>1500もしくは血清蛋白-胸水総蛋白>3.1gの場合は漏出性を考える。

✅低Alb血症の時は、胸水と血清のAlbの差が1.2以上で漏出性

 

各項目の評価



胸腔ドレーン留置の判断基準

✅原因不明の胸水には安易にドレーンは入れない!

✅ドレーンを留置する大まかな基準は以下の通り(詳しくは後述参照)

  • 感染性胸水
  • 悪性胸水に対し癒着術を行う場合
  • 大量胸水の精査を行うため(胸水を排液して肺野の確認/呼吸状態を改善させて気管支鏡や胸膜生検)

 

感染性胸水

肺炎随伴性胸水や膿胸が疑われた場合は必ず呼吸器外科に相談する

✅下記のクラス分類に従ってドレナージの適応を決める

✅「明らかな膿胸」、「被包化した感染性の胸水」、「滲出性・好中球優位で半分くらい水が溜まっている胸水」、「塗抹や培養が陽性」、「PHや血糖が低い胸水」の場合は胸腔ドレーンを留置する。

それ以外の場合は抗菌薬で押してみる。

抗菌薬治療を行っているにも関わらず胸水が増加してくるような場合は胸腔ドレーンを留置する!

 

f:id:kodomonotsukai:20220121004330p:plain

 

悪性胸水

以下の時に胸腔ドレーンを留置する

✅呼吸器症状が出現している+化学療法で胸水の減少が期待できない場合(胸膜癒着術を検討

✅繰り返し貯留する胸水に対し、頻回の胸水穿刺が必要な場合(胸腔穿刺を繰り返すと被包化の原因になる)

✅胸水貯留により呼吸不全が出現し、気管支鏡や胸腔鏡などの検査の妨げになる場合

✅大量胸水により圧排された肺野を確認したい場合

 

ドレーンの管理

ドレーンの呼吸性変動がなくなったら(胸水の場合)

①ドレーンの壁当たり(位置の問題や多房化の影響)又はドレーンの閉塞の可能性を考える

②排液を確認する(排液が少ないなら側管から通水)→排液があれば閉塞はない。排液がない場合は③へ

体位変換を指示→呼吸性変動なしなら④へ

④ドレーンのミルキングを行う→呼吸性変動なしなら⑤へ

⑤胸部CTを施行し先当たりしてそうな場合は少し位置を変更する→違う場合は⑥へ

⑥ドレーンが閉塞している or 多房化の影響の可能性が高い

→閉塞が解除できなければ新しいドレーンを追加挿入。その後に古いドレーンは抜去する

 

ドレーンの呼吸性変動がなくなったら(気胸の場合)

①ドレーンの壁当たり(位置の問題)又はドレーンの閉塞の可能性を考える

②まずは体位変換を指示→呼吸性変動やリークなしなら③へ

③ドレーンのミルキングを行う→呼吸性変動やリークなしなら④へ

④時間をおいて胸部X線写真を撮像する。虚脱が進んでいれば、追加のドレーンを挿入する。虚脱しなければクランプテストをしているのと同じ状態なので抜去する。

 

ドレナージが不良な場合

①まずは呼吸性変動の有無を確認する(上記参照)

②ドレーンの先当たりや胸腔内の多房化の可能性を考慮し胸部CTを撮像する

③位置の変更 or ドレーンの追加挿入を行う

 

皮下気腫が増悪する場合

①ドレーンの挿入部を確認する→傷口の結び目がゆるい場合は縫合しなおす。

②皮下気腫部位に砂嚢を置く、バストバンドを巻く

③メラサキュームの陰圧を上げる

④皮下気腫がひどい場合は呼吸器外科コンサルト

 

 

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