とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

酸素化低下・呼吸困難

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オーバービュー

 

鑑別

★まずは頻度の高い鑑別疾患を考える

突発性の酸素化低下の鑑別

肺塞栓、気胸、気道閉塞(痰詰まり、喉頭浮腫、アナフィラキシー、腫瘍、異物、声帯麻痺)

よくある酸素化低下の鑑別

肺炎、喘息、COPD心不全ACS)、IP、PE、気胸、胸水、ARDS、無気肺、肺高血圧、上気道閉塞(痰詰まり、無気肺、喉頭浮腫、アナフィラキシー、腫瘍、異物、声帯麻痺)

 

 

鑑別の絞り込み!
Wheeze 喘息、COPD心不全
Coarse crackles 肺炎、心不全、ARDS
Fine crackles IP、ARDS
Stridor 上気道閉塞
呼吸音減弱 気胸、胸水、重症喘息・COPDによるsilent chest
起坐呼吸 心不全COPD、喘息
頚静脈怒張 心不全、肺高血圧症、肺血栓塞栓症
臥位呼吸 肝肺症候群、右左シャント、肺塞栓
湿性咳嗽あり? 感染
胸膜痛 肺炎、胸膜炎、膿胸、気胸、肺血栓塞栓症
浮腫 心不全、肺高血圧症、肺血栓塞栓症
CO₂貯留 COPD増悪、喘息、心不全、胸水貯留、気道閉塞、肺胞低換気(肥満、円背、側彎、神経筋疾患)、SAS
重度喫煙歴 COPD
AaDO₂ 開大していれば肺が原因。正常なら神経筋疾患、肺や胸郭のコンプライアンス低下による肺胞低換気。

 

 

最初の検査

❶ とりあえず胸部Xp(±吸痰)⇒ CTも躊躇しない!(CTは酸素化が安定してないと撮れないので)

*入院中の患者はなるべく早めに撮像するように依頼する!

❷ 採血

❸ 血ガス

❹ 必要なら心機能評価(BNP、心電図、心エコー)

 

追加の検査

肺炎ルーチン検査

採血4本、ガス、BNP、プロカル、血培、喀痰検査(抗酸菌検査、グラム染色)、尿検査、尿中抗原、異型肺炎セット

(☝毎回すべて出す必要はない。Fever workupも兼ねる)

間質性肺炎の検査はこちらを参照

聴診器

 

※異型肺炎セット

✅非定型肺炎:レジオネラ尿中抗原やマイコプラズマ迅速抗原/LAMP/IgM・IgG

✅抗酸菌や真菌:喀痰抗酸菌(必要なら3連痰)、QFT、抗MAC抗体、β-Dグルカン、アスペル抗原、クリプト抗原、喀痰細胞診(真菌/巨細胞封入体の評価)

✅ウイルス:インフルエンザ、COVID-19、C7-HRP

✅治療中の感染症がある場合は薬物血中濃度測定(VRCZなど)

✅感染期間中のステロイド減量や免疫抑制剤の中止・変更について主科に相談

 

Wheezeあり、閉塞性換気障害疑いの場合

✅増悪 ⇒ ABCアプローチ

心不全の除外BNP、心電図、心エコー、胸部Xp)

気管支喘息好酸球、IgE、喀痰好酸球、症状がmildで酸素化良好なら呼吸機能検査(BDテスト)、呼気NO、胸部Xp/CT(感染の確認)、喘息の原因評価 ⇒ ANCA、KL-6、SP-D、喀痰細胞診(真菌の評価)、アスペルギルス抗原、β-Dグルカン、アスペルギルス特異的IgE、副鼻腔CT (鼻茸や好酸球副鼻腔炎の評価)、アレルギーのエピソードやアスピリン不耐症の有無、RAST:MAST39やView39など(RASTは全て出すと高額になるので患者に説明を!

COPD好酸球、症状がmildで酸素化良好なら呼吸機能検査(BDテスト)、胸部Xp/CT。ACOが疑われる場合は気管支喘息の検査まで。

 

上気道閉塞が疑わしい場合

緊急気道確保

✅CTなどの画像評価や喉頭ファイバーなど

 

説明のつかない酸素化低下がある、突発性の酸素化低下で気胸・痰詰まりが否定された場合 

肺塞栓の除外のために造影CTを検討

 

その他の検査

肺HRCTまとめ」の項を参照。

 

AaDO₂の計算

AaDO₂=PAO₂-PaO₂

   =(FiO₂×713)-PaCO₂/0.8-PaO₂

正常値は4+(年齢/4)≒通常は10~20が正常(高齢者では上昇)

 

酸素化低下や呼吸苦の鑑別に行き詰まったら?

★下記の鑑別を丁寧に考えていく

 

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その他:メトヘモグロビン血症(血ガスでMetHb≧3%)、青酸カリや硫化水素中毒など

 

肺病変がはっきりしない場合の酸素化低下のアプローチ

よくある鑑別疾患

上気道閉塞(喉頭蓋炎声帯麻痺など)、気管支喘息COPD気腫がないものもある)、発熱(酸素解離曲線の左方移動)、心不全心タンポナーデ血栓塞栓症肺高血圧PTTM血管内リンパ腫、無気肺、シャント疾患、神経筋疾患、気管軟化症(TBMやEDAC)、横隔神経麻痺、肺胞低換気(肥満が多い)、睡眠時無呼吸症候群(夜間のみ)など

 

検査

✅採血4本(貧血と凝固の確認)、血ガス、BNP、TSH、FT4、プロカル、血培、尿検査、異型、胸部X線写真、可溶性IL-2R、IgE、ChE(有機リン中毒の除外)

✅呼気・吸気のCT撮像(モザイクパターンや気管軟化症の評価)

✅立位と仰臥位で呼気・吸気の胸部X線(横隔神経麻痺の評価)

胸部造影CT(肺塞栓と動静脈瘻)

心電図心エコー心不全・肺高血圧症の評価)

✅喀痰好酸球、IgE、呼気NO呼吸機能(BDテストや気道抵抗、DLCOの評価も)運動前後の呼吸機能評価(運動誘発喘息)

肺換気血流シンチ(シャント疾患やBOの評価)

✅6分間歩行

喉頭鏡や気管支鏡(上気道閉塞や声帯麻痺、気管軟化症の観察)

✅肺胞低換気の評価:血ガス、full PSG

✅MG・ALS・ギランバレー・筋ジストロフィーなどの神経筋疾患の検査(神経内科コンサルト。腰椎穿刺 ⇒ 蛋白細胞解離やオリゴクローナルバンド 、筋電図、抗ガングリオシド抗体、アセチルコリン受容体抗体抗、Musk抗体、脊髄の造影MRI検査など)、呼吸機能検査、呼吸筋力測定器、筋生検など。

✅経食道エコーによるマイクロバブル法(中隔欠損などの心内シャント、肺動静脈婁や肝肺症候群などの肺内シャントの確認)

✅肝肺症候群の検査(仰臥位で酸素化改善、肝機能評価、肺血流シンチによるシャント率計算、マイクロバブル心エコー)。

✅PTTMの検査:心エコー、全身造影CT(作成腫瘍の検索)、上下部内視鏡、肺血流シンチ、右心カテーテル(血液のセルブロック提出)

✅血管内リンパ腫:血液像目視、可溶性IL-2R、全身造影CT、PET-CT、ランダムスキンバイオプシー、骨髄穿刺、血液内科コンサルト

✅精神科コンサルト。

ポルフィリン症糖原病・ライソソーム病などの鑑別を。

 

酸素化低下のない呼吸困難のアプローチ

よくある鑑別疾患

労作時のみの酸素化低下、呼吸努力の増加(COPD気管支喘息ACO間質性肺炎などの肺疾患)、呼吸筋疲労(加齢や全身状態低下に伴う)、拘束性肺障害、心不全心タンポナーデ、肺高血圧、貧血、過換気症候群、アシドーシス、甲状腺機能亢進症、心因性など

 

検査

✅血算、生化、血糖、凝固、BNP、TSH、FT4

✅労作時に酸素化低下があるか確認(労作時モニタリング、リハビリでの評価、6分間歩行)

✅血液ガス

✅胸部X線写真/胸部CT(必要に応じて造影CT)

✅呼吸機能検査

✅心電図・心エコー

 

対症療法

✅呼吸リハビリテーション

✅呼吸困難に対する一般的な対処薬

✅呼吸機能の低下がある場合は下記を処方

  • SABA頓用(メプチン、サルタノール)
  • LABA/LAMA(スピオルト、アノーロ)
  • ユニフィル200~400mg/日 分1 夕食後内服(最近は推奨はされない傾向)

✅不安からの呼吸困難感、原因のはっきりしない呼吸困難感に対する追加処方

✅悪性腫瘍に伴う呼吸困難

  • 呼吸困難時にオプソ内用液(5mg) 1包内服
    1時間空けて追加内服可(1日4回まで)
    ※他のオピオイドと被らないように指示を出す
    (例:痛みが強い時 ⇒ オキノーム、呼吸苦が強いとき ⇒ オプソ)
  • レスキューが頻回の場合、オプソ 10~20mg 分2 定時内服

 

 

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