オーバービュー
鑑別
★まずは頻度の高い鑑別疾患を考える
突発性の酸素化低下の鑑別
肺塞栓、気胸、気道閉塞(痰詰まり、喉頭浮腫、アナフィラキシー、腫瘍、異物、声帯麻痺)
よくある酸素化低下の鑑別
肺炎、喘息、COPD、心不全(ACS)、IP、PE、気胸、胸水、ARDS、無気肺、肺高血圧、上気道閉塞(痰詰まり、無気肺、喉頭浮腫、アナフィラキシー、腫瘍、異物、声帯麻痺)
最初の検査
❶ とりあえず胸部Xp(±吸痰)⇒ CTも躊躇しない!(CTは酸素化が安定してないと撮れないので)
*入院中の患者はなるべく早めに撮像するように依頼する!
❷ 採血
❸ 血ガス
❹ 必要なら心機能評価(BNP、心電図、心エコー)
追加の検査
肺炎ルーチン検査
✅採血4本、ガス、BNP、プロカル、血培、喀痰検査(抗酸菌検査、グラム染色)、尿検査、尿中抗原、異型肺炎セット
(☝毎回すべて出す必要はない。Fever workupも兼ねる)
✅間質性肺炎の検査はこちらを参照
✅聴診器
※異型肺炎セット
✅非定型肺炎:レジオネラ尿中抗原やマイコプラズマ迅速抗原/LAMP/IgM・IgG
✅抗酸菌や真菌:喀痰抗酸菌(必要なら3連痰)、QFT、抗MAC抗体、β-Dグルカン、アスペル抗原、クリプト抗原、喀痰細胞診(真菌/巨細胞封入体の評価)
✅ウイルス:インフルエンザ、COVID-19、C7-HRP
✅治療中の感染症がある場合は薬物血中濃度測定(VRCZなど)
✅感染期間中のステロイド減量や免疫抑制剤の中止・変更について主科に相談
Wheezeあり、閉塞性換気障害疑いの場合
✅増悪 ⇒ ABCアプローチ
✅心不全の除外(BNP、心電図、心エコー、胸部Xp)
✅気管支喘息:好酸球、IgE、喀痰好酸球、症状がmildで酸素化良好なら呼吸機能検査(BDテスト)、呼気NO、胸部Xp/CT(感染の確認)、喘息の原因評価 ⇒ ANCA、KL-6、SP-D、喀痰細胞診(真菌の評価)、アスペルギルス抗原、β-Dグルカン、アスペルギルス特異的IgE、副鼻腔CT (鼻茸や好酸球性副鼻腔炎の評価)、アレルギーのエピソードやアスピリン不耐症の有無、RAST:MAST39やView39など(RASTは全て出すと高額になるので患者に説明を!)
✅COPD:好酸球、症状がmildで酸素化良好なら呼吸機能検査(BDテスト)、胸部Xp/CT。ACOが疑われる場合は気管支喘息の検査まで。
上気道閉塞が疑わしい場合
✅緊急気道確保
✅CTなどの画像評価や喉頭ファイバーなど
説明のつかない酸素化低下がある、突発性の酸素化低下で気胸・痰詰まりが否定された場合
肺塞栓の除外のために造影CTを検討
その他の検査
「肺HRCTまとめ」の項を参照。
AaDO₂の計算
AaDO₂=PAO₂-PaO₂
=(FiO₂×713)-PaCO₂/0.8-PaO₂
正常値は4+(年齢/4)≒通常は10~20が正常(高齢者では上昇)
酸素化低下や呼吸苦の鑑別に行き詰まったら?
★下記の鑑別を丁寧に考えていく
その他:メトヘモグロビン血症(血ガスでMetHb≧3%)、青酸カリや硫化水素中毒など
肺病変がはっきりしない場合の酸素化低下のアプローチ
よくある鑑別疾患
上気道閉塞(喉頭蓋炎や声帯麻痺など)、気管支喘息、COPD(気腫がないものもある)、発熱(酸素解離曲線の左方移動)、心不全、心タンポナーデ、肺血栓塞栓症、肺高血圧、PTTM、血管内リンパ腫、無気肺、シャント疾患、神経筋疾患、気管軟化症(TBMやEDAC)、横隔神経麻痺、肺胞低換気(肥満が多い)、睡眠時無呼吸症候群(夜間のみ)など
検査
✅採血4本(貧血と凝固の確認)、血ガス、BNP、TSH、FT4、プロカル、血培、尿検査、異型、胸部X線写真、可溶性IL-2R、IgE、ChE(有機リン中毒の除外)
✅呼気・吸気のCT撮像(モザイクパターンや気管軟化症の評価)
✅立位と仰臥位で呼気・吸気の胸部X線(横隔神経麻痺の評価)
✅胸部造影CT(肺塞栓と動静脈瘻)
✅心電図、心エコー(心不全・肺高血圧症の評価)
✅喀痰好酸球、IgE、呼気NO、呼吸機能(BDテストや気道抵抗、DLCOの評価も)、運動前後の呼吸機能評価(運動誘発喘息)
✅肺換気血流シンチ(シャント疾患やBOの評価)
✅6分間歩行
✅喉頭鏡や気管支鏡(上気道閉塞や声帯麻痺、気管軟化症の観察)
✅肺胞低換気の評価:血ガス、full PSG
✅MG・ALS・ギランバレー・筋ジストロフィーなどの神経筋疾患の検査(神経内科コンサルト。腰椎穿刺 ⇒ 蛋白細胞解離やオリゴクローナルバンド 、筋電図、抗ガングリオシド抗体、アセチルコリン受容体抗体抗、Musk抗体、脊髄の造影MRI検査など)、呼吸機能検査、呼吸筋力測定器、筋生検など。
✅経食道エコーによるマイクロバブル法(中隔欠損などの心内シャント、肺動静脈婁や肝肺症候群などの肺内シャントの確認)
✅肝肺症候群の検査(仰臥位で酸素化改善、肝機能評価、肺血流シンチによるシャント率計算、マイクロバブル心エコー)。
✅PTTMの検査:心エコー、全身造影CT(作成腫瘍の検索)、上下部内視鏡、肺血流シンチ、右心カテーテル(血液のセルブロック提出)
✅血管内リンパ腫:血液像目視、可溶性IL-2R、全身造影CT、PET-CT、ランダムスキンバイオプシー、骨髄穿刺、血液内科コンサルト
✅精神科コンサルト。
✅ポルフィリン症、糖原病・ライソソーム病などの鑑別を。
酸素化低下のない呼吸困難のアプローチ
よくある鑑別疾患
労作時のみの酸素化低下、呼吸努力の増加(COPD、気管支喘息、ACO、間質性肺炎などの肺疾患)、呼吸筋疲労(加齢や全身状態低下に伴う)、拘束性肺障害、心不全、心タンポナーデ、肺高血圧、貧血、過換気症候群、アシドーシス、甲状腺機能亢進症、心因性など
検査
✅血算、生化、血糖、凝固、BNP、TSH、FT4
✅労作時に酸素化低下があるか確認(労作時モニタリング、リハビリでの評価、6分間歩行)
✅血液ガス
✅胸部X線写真/胸部CT(必要に応じて造影CT)
✅呼吸機能検査
✅心電図・心エコー
対症療法
✅呼吸リハビリテーション
✅呼吸困難に対する一般的な対処薬
✅呼吸機能の低下がある場合は下記を処方
- SABA頓用(メプチン、サルタノール)
- LABA/LAMA(スピオルト、アノーロ)
- ユニフィル200~400mg/日 分1 夕食後内服(最近は推奨はされない傾向)
✅不安からの呼吸困難感、原因のはっきりしない呼吸困難感に対する追加処方
✅悪性腫瘍に伴う呼吸困難
- 呼吸困難時にオプソ内用液(5mg) 1包内服
1時間空けて追加内服可(1日4回まで)
※他のオピオイドと被らないように指示を出す
(例:痛みが強い時 ⇒ オキノーム、呼吸苦が強いとき ⇒ オプソ)
- レスキューが頻回の場合、オプソ 10~20mg 分2 定時内服
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