とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

急性期の血糖コントロール

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血糖に関する初期対応

経管栄養の持続投与

以下のいずれか

経管栄養の間欠投与

皮下注射スライディングスケール

⇒ 強化インスリン療法もしくは血糖降下薬内服へ移行

IVH使用中

以下のいずれか

欠食中

①血糖降下薬・定期インスリンは中止

②欠食が長引きそうであれば糖入り末梢輸液

③血糖が高い場合は皮下注射スライディングスケール

食事量が不安定

皮下注射を食後打ちに変更(食事量で調節)

血糖がかなり高い

以下のいずれか

DKA
  • インスリン持注(CVII)を行うDKAの治療はこちら
  • 血糖≦200mg/dLかつ経口摂取可かつ以下の3項目のうち2項目以上満たす場合は皮下注射に切り替え

①血清アニオンギャップ≦12mEq/L

②HCO₃⁻≧15mmol/L

③PH≧7.3(静脈血で良い)

 

急性期の血糖目標値

BS 150~180mg/dl(200以下)を目標にコントロールを行う。

空腹時血糖は100~120㎎/dlを目標にコントロールを行う。

 

スライディングスケール

★ノボリンRなどの速効型インスリンを用いて行う。

★血糖1日4検(毎食前・眠前)指示

★皮下注射は毎食前のみ(眠前は使用しない)

低血糖時はメインを5%Tz500mlに切り替えて、20%Tz 20mlをiv

 

食前血糖値 低量スケール 高量スケール
≦79 ブドウ糖10g内服または20%Tz20ml iv、Dr.call
80~159    0単位     0単位
160~199    2単位     4単位
200~249    4単位     6単位
250~299    6単位     8単位
300~349    8単位     10単位
≧350          Dr.call

 

食事量不安定な場合のスケール

★スケールは食後打ちとし、食事量で単位数を変更する。

 

①簡便な調節方法

食事摂取量が半量以下の場合は投与する単位数を半量にする。

食前血糖値 食事量半量以下 食事量半量以上
≦79 ブドウ糖10g内服または20%Tz20ml iv、Dr.call
80~159     0       0
160~199     1       2
200~249     2       4
250~299     3       6
300~349     4       8
≧350           Dr.call

 

②細かい調節方法

食前血糖値 食事量≦1/3 1/3≦食事量≦2/3
≦79 ブドウ糖10g内服または20%Tz20ml iv、Dr.call
80~159     0       0
160~199     0       1
200~249     2       3
250~299     3       5
300~349     4       7
≧350           Dr.call

 

インスリン持注スケール

ヒューマリンR50単位+生食50ml(1単位/ml)で使用。

<初回投与量>

200mg/dl以上の時:0.5ml/hrで開始

300mg/dl以上の時:1.0ml/hrで開始

400mg/dl以上の時:1.5ml/hrで開始

<血糖測定>

4時間毎に血糖を測定し投与量を調節。

インスリン開始時および投与量変更時は1時間後に血糖再検する。

<1時間後の血糖再検時>

以下にひっかかる場合はDr.call

①血糖の増減が1時間で100mg/dl以上ある場合

②100<血糖<400を逸脱する場合

 

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強化インスリン療法

持効型インスリンを眠前に1回:インスリングラルギン(Gla)、トレシーバ(Deg)など

超速効型インスリンを毎食前:ノボラピッド(Asp)、ヒューマログ(Lis)など

※現在は超超速効型インスリンが主流(ルムジェブやフィアスプなど)

 

強化インスリン療法の適応

■絶対的適応

■相対的適応

  • インスリン非依存状態であるが、著明な高血糖がある(FPG>250mg/dl、随時血糖>350mg/dl)
    私見だが、尿中ケトン体陽性、HbA1c≧10、スケールで使用しているインスリンの1日の合計単位数が10~15単位以上、CPI<0.8などの場合は強化インスリン療法が望ましい。
  • 経口血糖降下薬の一次無効、二次無効
  • 痩せ型で栄養状態が低下している
  • ステロイド治療時に高血糖を認める
  • 糖毒性を積極的に解除する場合

 

初回導入

①初期インスリン量(1日総量)を決める

  • 0.3単位/kg:通常
  • 0.2単位/kg:痩せ型、高齢者(70歳以上)、腎不全(Cr≧2.0)

②1日総量の30%を持効型(眠前)、残りの70%を3等分して超速効型(毎食前)に振り分ける

 

インスリン持注からの切り替え

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血糖降下薬からの切り替え

◆入院中の場合

最初から強化インスリン療法で管理したほうが良い(と思う)

①血糖降下薬を一旦すべて中止

②まずはスケール対応とする。空腹時血糖が非常に高い場合は持効型インスリンを4~8単位(体重×0.1~0.2単位 眠前)で併用する。

③スケールの量をもとに持効型と超速攻型の量を決める。(こちらを参照)

 

◆外来での導入の場合

BOTで始めるのが最近の主流

①SU薬を3mg以上(half max)使用している場合はSU薬を2mgに減量する

②持効型を4~8単位(体重×0.1~0.2単位 眠前)で開始

③1~2週間毎に来院していただき空腹時血糖80~120mgを目指して調節する。SU薬は少しずつ減らしていき、最終的に中止する。(食後高血糖は無視してよい)

④Basalが調節できたら、食後高血糖を是正していく。(以下の3つより選択する)

  • 超速効型インスリンを2~4単位ずつ追加する
  • グリニド薬を追加する(SU薬とグリニド薬は併用しない
  • DPP-4阻害剤を追加する

 

皮下注射のスケールからの切り替え

★決まったやり方はない

個人的なやり方は・・・

①1日に使っているスケールの合計単位数を計算し0.8をかける

②計算した値の50%~60%を持効型として注射する。同時にスケールも併用を継続する。

③スケールの量を参考に超速攻型の量を決める。

 

強化インスリン療法の単位数変更方法

★責任インスリンの考え方で単位数を変更する

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①簡便な単位変更プロトコール

早朝空腹時血糖 持効型インスリン
≦79 -2
80~159 0
160~199 +1
≧200 +2
食前血糖値 超速攻型インスリン
≦79 -2
80~159 0
160~199 +1
200~249 +2
250~299 +3
300~349 +4
≧350 一旦スケールへ

 

②細かい単位変更プロトコール

朝食前血糖が130以上の場合は2単位増量

朝食前血糖が100未満の場合は2単位減量

朝食前血糖が80未満の場合は4単位減量

昼食前、夕食前、眠前血糖が80未満の場合はひとつ前のタイミングのインスリンを4単位減量

朝食前→昼食前が20以上増加の場合は朝2単位増量、60以上増加の場合は朝4単位増量

昼食前→夕食前が20以上増加の場合は昼2単位増量、60以上増加の場合は昼4単位増量

夕食前→眠前が20以上増加の場合は夕2単位増量、60以上増加の場合は夕4単位増量

 

眠前の高血糖でCallがあった場合の対応

原則インスリン注射は行わない

✅眠前血糖≧500mg/dl以上の場合はインスリン皮下注射で対応する。

✅500未満の場合はインスリンは打たずに経過を見る。

✅糖入り輸液をしている場合は一旦中止。

✅眠前にインスリンを打つ場合は低血糖に注意して対応する

超速効型インスリンを4~6単位皮下注射、2時間後に血糖再検し200~500mg/dlであれば経過観察。200未満の場合は、さらに2時間後に血糖再検する。

 

欠食中の血糖管理

①まず血糖降下薬中止、インスリン定期打ち中止

②欠食が長くなりそうであれば、糖入り補液を追加

③血糖を見ながら、血糖値が高い場合は皮下注射スライディングスケール

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ステロイド糖尿病の対応

プレドニゾロン20mg以上内服中の場合はインスリンが必要になる場合が多い。

内服でコントロールする場合は、インスリン分泌促進薬(DPP-4もしくは食後高血糖にグリニド薬)を使用する。



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