とある内科医の病棟マニュアル

とある内科医の病棟マニュアル

呼吸器内科医が日常診療の考え方を綴る備忘録

貧血

スポンサーリンク

 

 

フローチャート

その他:薬剤性血球減少(化学療法など)、放射線治療、体液貯留による希釈、胃切除後(鉄欠乏性貧血、ビタミンB12欠乏)、微量元素欠乏性貧血亜鉛欠乏性貧血、銅欠乏性貧血)など

 

最初の検査 

★Hb≦10g/dlで積極的に精査する。

✅消化管出血の確認のために便潜血ジギタール。上部消化管出血が疑われる場合は胃管挿入して確認

被疑薬の変更・中止を検討

✅出血セット血算(Hb、Plt)、凝固、鉄の評価(Fe、フェリチン、TIBC、UIBC)、必要に応じて輸血検査⇒ 輸血を検討輸血療法を参照

✅急性出血の評価Hbの再検(低下のスピードが速い場合は急性出血を疑う)網赤血球(Ret)BUN/Cre比(上部消化管出血の評価)、RDW。

✅必要に応じて画像検査(CTなど)

Major Bleedingが疑われる場合は造影CT(出血源の精査)

(24~48時間以内にHbが2以上低下、またはRBC2単位以上輸血が必要な場合)

✅上部消化管出血疑いの場合は必要に応じて胃管挿入で確認検討

緊急止血(緊急上部消化管内視鏡やIVR)

鉄欠乏性貧血、便潜血陽性、TSAT≦20%の場合は待機的に消化管内視鏡検査⇒小腸内視鏡まで考慮。女性の場合は性器出血や過多月経がないか確認!

*TSAT=(鉄/TIBC)×100

✅必要なら血液内科コンサルト

 

RPI

RPI=〔網赤血球数%×(患者Ht/正常Ht)〕/成熟因子

Ht:成人男性=40-50%、成人女性:35-45%

成熟因子:Ht36-45で1.0、26-35で1.5、16-25で2.0、15未満で2.5

 

★RPI≧2.5や網赤血球の実数10万以上で産生増加(溶血や出血)、RPI≦2.5で産生低下と判断する。

 

MCVとRDW

 

便潜血陽性の対応

f:id:kodomonotsukai:20211109100128p:plain

 

追加検査

✅上下部内視鏡、TSH、FT4、目視(Fragmentationの確認)。

✅腎性貧血を疑う場合はEPO

✅正球性~大球性であればVitB12(200pg/ml未満で欠乏)、葉酸(3µg/ml未満で欠乏)、血清Cu、セルロプラスミン、TSH、FT4、目視で好中球過分葉の評価 、悪性貧血の可能性が高い場合は抗内因子抗体・抗胃壁抗体・上部消化管内視鏡(癌や萎縮性胃炎のスクリーニング)を提出する。ビタミンB12葉酸が正常でも大球性貧血がある場合は血中総ホモシステインを測定する。

溶血の可能性が疑われる場合、目視(Fragmentationの確認)、Pの評価(低P血症による溶血性貧血の除外)、総Bil、間接Bil、直接クームス試験、間接クームス試験、寒冷凝集素(血液が固まる場合は温めて提出)、ハプトグロビン、尿定性・沈査(溶血の評価や膠原病TMAによる腎障害の確認)。自己免疫性溶血性貧血の場合はRAやSLE、リンパ増殖性疾患の評価を行う。

✅必要に応じて、血清Zn、血清Cu、セルロプラスミン、血液疾患の評価(目視、骨髄穿刺、免疫グロブリン(IgG・IgA・IgM)、可溶性IL-2R 等)

 

輸血療法

★基本はHb≦7.0g/dlで輸血と考える

急性出血

出血量に応じて輸血を行う(Hb値を輸血の参考にはしない)。Hb≦6.0g/dLでほぼ必須。

慢性貧血

Hb<7.0g/dlの場合に輸血を行う。

心疾患

Hb<8.0g/dLで輸血を行う。

Hb8~10g/dLを目標に輸血を行う。

 

※予測上昇Hb ≒ RBC2単位投与した場合は70÷体重(kg)と覚える。

 

鉄欠乏性貧血の診断と治療

診断

フェリチン<12ng/mlであれば確定診断。フェリチン<100ng/mlでも可能性あり。

TSATが20%未満は感度が高く、鉄補充を考慮。

*TSAT=(鉄/TIBC)×100

f:id:kodomonotsukai:20211226094218p:plain

 

原因

消化管出血(上下部内視鏡小腸内視鏡まで検討)、性器出血、萎縮性胃炎(鉄吸収障害。除菌療法のみでIDAが改善することもある)、鉄不応性鉄欠乏性貧血(血液内科コンサルト)

 

治療

Hb10未満またはフェリチン12未満で鉄補充を開始する

✅鉄剤をフェリチンが30~50程度もしくはTSAT≧20になるまで投与する。
※ただし静注製剤はフェリチンやTSATはすぐに正常化してしまうため参考にならない。必ず中尾式などを参考に補充量を調節すること!

✅フェリチンが50~100と比較的高い場合はTSAT20%を目標に補充を行う。

 

軽度の貧血の場合

※チラージンと酸化マグネシウムは鉄剤との投与間隔を空けること!

 

重度の貧血の場合、活動性出血時、吸収障害の場合

 静注製剤を使用する(体内への吸収率を上げるため、便が黒くならないので出血のモニターができる)

  • フェジン 40mg~120mg/日 10~20%Tzで5~10倍に希釈して投与
  • モノヴァー 20mg/kg(max1000mg)を週1回投与

    静注製剤を使用する場合は中尾式による必要鉄量を参考に投与する。

     必要鉄量[mg]=(2.7×(目標Hb濃度-治療前Hb濃度)+17)×BW

 

鉄剤による消化器症状が強い場合や鉄過敏が疑われる場合

  • インクレミンを使用する。

 

腎性貧血の診断と治療

診断

✅GFR<60ml/min/1.73m²で腎性貧血を合併する割合が増加する

✅Hb<10g/dlでEPO<50mIU/mLであれば可能性が高い。

✅フェリチン<100ng/ml、TSAT<20%であれば鉄欠乏性貧血の合併の可能性高いため、ESA製剤投与の前に鉄剤の補充を検討する。

 

 

ランキングに参加中

読んでいただき感謝申し上げます。

クリックして投票いただけると励みになります!

ブログランキング・にほんブログ村へ

にほんブログ村


人気ブログランキング